2023.12.28

大詰めの原稿に引用するのにちょうどいいものがないかとド・マン『盲目と洞察』やベケットの小説群などをザッピングしつつアレナスの『真っ白いスカンクたちの館』もてきとうに開いてみたらどのページもたいへん愉快で、任意の場所から声に出して読むだけですぐに面白い時間が流れる。原稿は寝かせておく状態までもっていって、すぐさま読み出す。僕も踊り出してしまいそうだ。

『真っ白いスカンクたちの館』の奔放さに疲れたら『ニュルンベルク合流』の手堅さに取り組み、フィリップ・サンズの四角さに膿んだらレイナルド・アレナスで放出するという交互浴が完成し、年末の読書は万全の体制。

合間にお風呂の大掃除。壁から床までぴかぴかにする。カビ落としの待機時間にキッチンの換気扇の外側も拭く。

夜は奥さんがいないのでラーメン屋で餃子と瓶ビール。帰宅してウイスキーのお湯割りをポテチとアイスでちびちびやりながら『荒野の千鳥足』と『CLIMAX』の二本立て上映。どちらも不潔で最低で胸糞悪くなる、たいへんよい映画で大満足。『荒野の千鳥足』でカンガルーを残虐に殺しまくる人間への嫌気を元気でハイな人間たちの狂乱と破滅が晴らしてくれるかと思いきや、同じくらい最低の人間どもしか出てこない『CLIMAX』のほうがトーンは暗く陰惨で気が滅入った。『荒野の千鳥足』はこれから折に触れて観返してしまいそうな予感。全編脂ぎっていて、僕が海外文学に求めているギトギトした汗臭さで充満しているのがいい。そこには吹き溜まり特有の底抜けの明るさがある。それは決していいものではなくて、すこしでも我にかえってしまえば死ぬ他ないような状況の中で、必死に躁状態を保つような馬鹿騒ぎだから、表面上の阿呆臭さが極まれば極まるほど悲惨でもある。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。