2024.03.31

黄砂だか花粉だかで朝から腫れぼったく、関節の辺りが浮腫んでいる感じがある。それでぐだぐだしていた。ようやく起き出してコーヒー、食パンにベーコンとチーズを載せて焼いたの。それから発送作業。この数日で注文が集中して、何十冊と出荷している。TBSラジオ効果だろうか。新規の問い合わせというのはなく、すでに長く売ってくれているお店からの追加が何件もある。嬉しい。一つの店で何冊も売れるというのは、ただどこかで一冊だけ買うお客さんのままでいると想像のつかないことで、本に関しては一作のリピート購入というのは稀なはずだから、つねにはじめての一冊である誰かがまだここには来るはずだという予感を持ってもらえるということだった。いまだに一冊でも自分の作った本が売れるというのはワンダーだし、誰かがこれは売れると信じてくれるというのもより一層のワンダーだ。きょう発送のお店はいつもサイン本にして納品していて、今回からは消しゴム判子を導入した。図案を描いたら奥さんがせっせと彫ってくれたのだ。いちど鏡像にしそびれて失敗したから二号。けっこういい感じだと思う。判子バージョンのサイン本はいまのところ梅田の清風堂書店でしか買えない。数日で着荷するだろうから万が一判子が欲しくて欲しくてたまらないという方はぜひチェックしてみて欲しい。この日記を毎日のようにチェックして、あらゆるパターンのZINE を収集するような人はいないと思うけれど。熱心なファン、というものが自分につくとは考えられない。そういう熱心さを頭から醒ますようなことに気を配っているつもりだからだ。これは交友関係もそうで、ずいぶん手前の方で一線を引いておかないと安心して好意をもてない。ひとつのものや人に信を置くような態度に乗れない。つねに疑わしいなという思いを抱き、半身で面白がりたい。これはほとんど個人的な倫理に近い。

きょうは暑そうなので半袖にカーディガンを羽織って出かける。Tシャツは奥さんが三歳くらいの頃に描いた蛙のイラストを線画データ化したものをプリントしたとっておきのもの。奥さんの両親が特注で作ったものをお裾分けしてもらった。好きな人の幼少期の作品を二次利用した特注品を身に纏う。これはアガる。最高気温が26℃にもなるこの日、カーディガンは早々に脱いだので存分に蛙を世界に見せびらかすことができた。千駄木のとんかつを食べて、往来堂書店で『正反対な君と僕』と『セーフセックス』を買って、谷中の雑貨屋やカフェを覗き、ステンドグラスを吟味して、喫茶店で涼んだ。谷根千散歩は久しぶりで、しかし食いしん坊こそ楽しめる散歩コースしか知らないからはじめにとんかつから始めてしまうとなかなか組み立てが難しい。紫外線に疲れたので夕方には帰宅。

奥さんが居眠りするあいだにZINE に載せるエッセイを二本書いて、どちらも想定していた文字数を超過しているがしれっと出す。あすから四月であることを考えるとギリギリの進行ではある。しかし年度も跨ぐしあれやこれやの実感が湧いていない。これから数ヶ月が激動のはずなのだけれど。日記を書いて、歯を磨こうとすると奥さんが僕の歯ブラシを使ってた。うっかりしすぎ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。