2025.09.30

月末。今年は本を四冊出したかったのに、結局一冊しか出せていない。今年の抱負というのはそういうものだ。せめてもう一冊出したいけれど、いまいちばん書く機運が高まっているのは依頼されたまま二年ほど書きあぐねている本の原稿で、これはどうあれ今年中には出ないだろう。そもそも、この本が書けていなかった理由も、自主制作本を四冊出したかった理由も、根は同じだ。それはこういうことだ。僕は、誰からも頼まれてもいない本を自作して出すことを自身の核として据えている。これは自分が楽しく本を読むために必要な設定で、依頼原稿はどうしても読みたい本ではなく読まなければいけない本を増やす。なるべく必要としての読書はしたくない。ただでさえ少ない時間を圧迫し、楽しい読書をなくしてしまうからだ。だからまず優先すべきは楽しく読める本を読むことであり、そうした読書からできるのが自分の本である。この楽しい読書の傾向が、依頼される企画と合わない間は自主制作本になる。そして、しばらく企画にそぐうような読書をしたいと思えそうにない。だから四冊くらい好きに読んで作って、依頼内容と相性のいい読書気分がやってくるのを待とう。そういうつもりだったのだけれど、勝手気ままに読んで楽しんでいるうちに、次に作れそうな本が依頼されたものに似てきたことに気がついたのが今だ。やれるのであればやりきりたいから、この一ヶ月くらいで第一稿を書き終わりたい。

しかし、来月頭にはカハタレの福岡公演があり、セリフを覚えなくてはいけないし、宣伝のためのあれこれも準備する必要がある。そのほかにも「さめない社交」の活動も嬉しい拡大を見せており、あれれ、なんだか余裕が全くない。涼しくなってきて活発になってきた気力を蕩尽するような予兆に満ちている。不穏な九月の月末だ。

近々の未来の不安でいっぱいいっぱいになったので、賃労働を早めに切り上げてひとり上野で焼酎を飲む。小一時間、ぐだぐだイベントを走りながら浅漬けでちびりちびりとやり、楽しい。それで時間になったので、妹たちと、遠方のいとこたちとで飲み食いした。英語と日本語がないまぜになったおしゃべりで、僕は英語は聞けるが話せない。みんな英語が話せてすごい。話せるといいだろうな。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。