2025.11.07

まだ薄明るくもならない時間帯に目が覚めるとベッドの際まで追い込まれており、ルドンがど真ん中のスペースを占有して気持ちよさそうに眠っていた。どうにかやんわりと端に寄せようとするのだが、かわいく擦り寄ってきてすぐポジションを取り返されるので、寝直すまでにかなりの時間がかかった。

仕事部屋の壁面に釘を打ち付けてデムースTシャツを飾ろうかと考える。釘を打てそうな壁面がどの面なのか、叩いて音を確かめてみると、それぞれ違う音がすることはわかるがどの音がどういう意味をもつのかはわからないので後で奥さんに訊きたかったのだけれど奥さんは二十二時前まで労働しているので機会を逸した。いただいた注文のゆうパックの荷物もつくりたいのだが、これも奥さんに頼り切りのせいで滞っている。そもそも部屋の掃除もろくにできていないし、洗い物も翌日に持ち越してばかりで、だいぶ気持ちが荒む。やるべきことを何もできていない。せめて自分の領分の二階のカーペットをせっせと掃除する。おとといの肉じゃがのあじつけを濃いめになおして、チキンステーキ、玉ねぎとベーコンの味噌汁の夕食を準備しておく。奥さんの退勤を待ちながら『チェア・カンパニー』を見始めて、『ラヴクラフト・カンパニー』『ウォッチメン』に続いてHBOドラマの気分らしい。たいへん厭な感じのドラマで、厭だーと思いながら面白い。どうせ厭な気分になるのなら、と積んでいた『ザ・カース』も始めて、厭だーと思いながら面白い。今期はアニメをまったく見ないでいるが、それはそれでこうして別ジャンルを呼び込む余地ができていい。やっと退勤して、食欲がうまく湧かない奥さんはげっそりしていて、なぜだか顔がいつも以上に良くてやたらセクシーだ。多忙さというのが人を魅力的にするという地獄のように悪趣味な法則は確かに存在するのかもしれない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。