朝のうちに目は覚めたけれど、昼近くまで何度も寝てしまう。しばらく右腕を枕に添い寝していたルドンも正午になる頃には起き上がって心配そうにこちらを覗き込み、なにかを確かめるように前足で丹念に気道を踏みつけてくる。さすがに起きよう、と思えた。しかしこの猫は最近ほぼ毎朝ひとの息の根を止めにくる。起きて欲しいのだろうが、その方法がかなり物騒だ。寝転びながらwebゲンロンに掲載の中村達「フランツ・ファノンをカリブ海哲学に読み戻す」を面白く読んでいたが、とにかく眠たくて読み終えるのにほとんど一日がかりだった。気圧だろうか。まったく動けない。諦めよう、と今日を諦めたのはだから早かった。
Amazonで見つけたアモジという胡乱なブランドのルームシューズを室内履きに使い始めて、案外よかったのでもこもこサンダルも買っておいた。今日はもこもこスリッパをおろして、少しサイズが大きかったけれど、分厚めの靴下でつっかけていけば問題はなさそう。とにかく靴下が嫌いなので最悪素足につっかけて出ていけるというのはちょっとした外出の億劫さを軽減してくれるだろう。それでスーパーに買い物に行って、今日はクリスマスイブなのですき焼きだった。お昼用にお寿司を買って、食べ終えて部屋の掃除をして、しばらくしてから奥さんを捕まえておしゃべりする。奥さんはこの数日Geminiを使い出してめきめき生活をエンハンスしている。壁打ち相手としてライバル登場。Geminiに負けないように必死におしゃべりするのだが、利害関係や愛情から遠く離れた機械相手の方が課題の整理やタスク出しもしやすいし、素直にいうことに従えるというのもわかる。じっさい、僕が言ってもやらないようなことをGeminiにいわれたらすぐやっており、なんとなく釈然としないが納得はできなくはない。ラッダイト運動に従事した人たちの気持ちがすこしだけわかる。おしゃべりをすると活力が湧く。
春菊を買い忘れて夕方にまたサンダルつっかけて行く。夕飯前の一時間くらいだけ頭が動く時間があったのですこしだけ来月納品の原稿を書く。書けば楽しい気持ちになるのだからさっさとやればいいのに、楽しく書ける気がしなくてずるずる先延ばしにするようになってしまっているところがある。よくない。さっさと書くべきだ。年内にあるていど済ませておけそうだ。明確な締め切りがなければ書けないなあというか、気長なプロジェクトはいつまでもずるずる取っておきがちで、コンスタントにあれこれ発表や出版できる人らのすごさが身に染みるようになってきた。軽やかに連発することだけが取り柄だという自認があったが、もう全然そんなことない。とにかくいつでも眠いし、何もやる気がしない。でも、たぶん軽薄に連発しないからこうなっている。息の長いプロジェクトのなにがいけないって、締め切りがないからいつまででも準備ができる。準備をすればするほど関心も状態も移ろっていくから、どのタイミングで書き始めればいいかわからなくなる。日記のようなスナップショットしか作れない。日々ひとつの制作への注意を持続させて何かを完成させたいという欲望に乏しい。だって今日と明日の自分は違うのだし。一昨日の自分はもう他人で何を考えていたのか覚えていないし、明後日の自分は未知すぎて信じられない。どうすればいいんだろう。たぶんわかってはいて、毎日短距離走みたいに試してみて、うまくいく瞬間を待つとか、チャレンジの回数をこなすような書き方をするほか自分にはないはずだった。計画も記憶も無理。でも、できたらいいだろうな。Geminiにマネジメントしてもらおうかしら。
