2021.05.22(2-p.53)

一年以上ぶりの観劇の予定があって、せっかくだから一日デートかと思っていたけれど特に出かけたいところが思いつくわけでもなく、ソワレまで外で時間を持て余すよりは家にいたほうがいいと昨晩の時点でわかっていたはずなのに、いざ今日になってみると一日奥さんとデートだという気分になっていて、奥さんは昼過ぎまで一生懸命カレーを煮込んでいてほったらかしにされたのでめそめそした。天気もどんどん悪くなり、よりめそめそした。奥さんも困っていたが、いざ家を出るとなるとけろっとして、我ながら単純だった。きょうはどの本を持っていこうかなあ、最近は気圧がつらくって本が読めない、というか読みたい本がわからない、そう言いながら読んではいるのだが今日はもうなにも楽しめない気にすらなっていたから、シオランか、シオランだ! となって『生まれてきたことが苦しいあなたに』を引き抜いたときにはもうニコニコしていた。今日何を読むか決めるところからすでに読書は始まっているんだね、と奥さん。いいこと言うなあ。歩き出すともう楽しかった。

立川駅前の人ではそこまで減っているようには見えなかったけれど、シネマシティが開いていないから僕にとってはほとんど虚無だ。軽くお茶をして、テラス席から今日の劇場の入場開始の様子が見えて落ち着かなかった。僕はだんだん緊張してきて、いざ入場して劇場の空気が久しぶりで、それだけで胸がいっぱいだった。今は追跡アプリのためにスマホの電源を切らずWi-Fiと通知オンを切るというのが作法のようだ。今日の舞台は再演で、昨年の初演時も東京は緊急事態宣言下だった。はじめて配信で見たとき、フェイスシールドの透明さに驚いた。その頃から僕はずっとシトロンが好きで、きょうも彼が出てくると場が華やいだ。あと生で見るとダンスがキレッキレだった。かわいい。

満足して帰る頃にはすっかり街は静まっていて、立川でソワレはきついなあ、と言い合う。

夜中に帰って食べるカレーは美味しかった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。