2021.11.19(2-p.166)

僕は歌い出したら終わりなのだ。季節の変わり目が危ない。ふだんから自律神経が乱れてくると、アベシ、ユベシ、ハバス、ハムスター、などと意味のない奇声を発しだしたりするのだが、いよいよとなるとその奇声に節がつく。ハベッハバスタッコラッチャナーッとやり出したらもう駄目だ。僕の情緒は乱高下。大きな声を出したかと思えばめそめそしだす。

散歩してこい。

聡明な奥さんに諭されてとりあえず歩いてみる。近所のパン屋で昼食を買う。すこし遠回りして帰ってくる。それでもやっぱりハベッハバスタッコラッチャナーッ。ハムスターハムスター。

縄跳びでもしてみたら?

久しぶりにベランダで縄跳び百回。これでようやく人間に戻った。もう歌わない。安心だ。今日はベーシックインカムによる隷属なき道を示したすごく賢そうな人が人間というのはすごく善いんだということを書いた本と、居るのがつらかった人が心の消息を追う本を読み始めた。どちらも軽めに読めて滋味深いので、助かるぅ、と思いながら読んでいく。

明日は新刊の印刷したのが届く。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。