2022.02.16

昨晩は『千年狐』の最新話にうわー!と声を上げてから寝た。

ヤクザ映画でしか取れない栄養がある。hulu で『孤狼の血』を観る。いつだかタイムラインで見かけた気がする作品で、この前ピエール瀧のインタビューを読んでいたら白石和彌監督作が観てみたくなったのだった。『凶悪』しか観たことない。『孤狼の血』はべらぼうに面白かった。中村倫也の演技を初めて観た気がする。鉄砲玉の役で、とても好きな感じのはじけかただった。松坂桃李ってこんなにいい俳優だったんだな、と思う。みんな圧がすごくて、うるさくない絵が一個もない。元気が出る。石橋蓮司はいつも一番悪いやつで、いつもみっともなく死んでいくから、どの石橋蓮司だかわからなくなりそうだった。格好いい死に様の石橋蓮司って見たことない気がする。もしくは、情けなさが強烈すぎて忘れちゃうのか。うな重の迫力が最高だった。

もっと血が欲しくて『GONIN』を続けて観る。無駄にクネクネしてる本木雅弘がうるさくて笑える。だんだん可愛く見えてくる。全体的に変な映画で、ありふれた日本の景色をバックに、平気で銃がどんどん出てくることで醸し出される奇妙な無国籍感のせいだろう。『鮫肌男と桃尻女』を観返したくなった。みんな死んじゃう映画は無責任でいい。

『孤狼の血』は続編があるらしく、こちらはちょうど週末くらいに再上映が始まるらしい。日本アカデミー賞をたくさん獲ったそうだ。なんだかナイスタイミングだったらしい。こういうとき、自分はずいぶん世の流行りに疎くなったなあと思う。それでもいまウケてるものがうっかり僕にまで届いて、それでちゃんとウケてるんだから、流行りというのはすごいものだ。

何だかもっとヤクザや韓国映画のような、粘度の高い暴力が観たい。『アシュラ』もよかった。ああいうやつ、イーッて顔になっちゃうような痛そうさが観たい。綱渡りのような緊張と閉塞を感じたい。白石和彌という人はそんなのばっかり撮ってるようだった。慎吾ちゃんがしけた顔してるやつも気になる。でもこれは景気悪そうだ。景気のいいやつが観たい。『悪人伝』みたいなやつ。むっちりした身体が破壊を尽くす様子が観たいのかもしれない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。