昨晩は暗い部屋の中でソファに腰掛けてフェイクドキュメンタリー「Q」最終回。一時期YouTubeで見漁った「AC の怖いトラウマCM集」みたいな趣でかなり好みだな……と思いながら観ていた。最後まで見て、構造的な仕掛けはなかば予期してはいたのだけれど、かなり控えめな幕引きで、うわ、これは、めちゃ好みのやつじゃん、とはしゃいだ。解があると想像する余地をなるべく少なくするような突き放し方。探求しようとすればするほど空虚が深まっていく感じ。近年のインターネットの「考察」文化は野暮の極みだと思っているので、ぜひこのまま終わってほしい。そんで「理解したい」「納得できる像を結びたい」という野暮な欲望を掻き立て続けて、いつしか勝手に派手な尾鰭がついていって、数十年後YouTubeが滅びたあと誰も全貌を知らないものすごい巨大なナニカとして恐怖と不安の対象となっていってほしい。そう思った。にこにこして寝た。
今日はぎりぎりまで寝て、ブランチにモスバーガー。開場時間だと思っていたら開演時間で慌てて移動する。東京ドームシティホール。ヒロステ。キャストの怪我での中断を経て、東京初日。でかい劇場では個ではなく群を観たいんだなというのがよくわかるお芝居だった。前の2本は配信で見ていて、正直ピンと来なかったのだけど、語られる内容はヒロアカなのでバカみたいに泣けはした、くらいの感じだった。今回はじめて生で観て、これは、カメラが寄っていっちゃダメになる芝居の典型というか、全景で観ないとどうしようもない芝居だった。人と装置の動線の複雑さと、手数の多さ。キャスト間の技量の差を、膨大なタスクをとにかくこなすことを第一にすることで気にならなくさせる。巧い。ストーリーは歌舞伎と一緒で観客はもう知っている前提だから大胆な圧縮ができてしまう。だから語りの内容は限界まで削ぎ落として、とにかく運動の熱量と面白さで引っ張る。そして静的な場面はちゃんと技量のある人に任せる。基本的に個人に任せない冷徹さがあるのだが、それでもちゃんと個々人のよさにも目がいくようなバランスで仕上がっていて、なんじゃこりゃめちゃくちゃ大変なことをやっているな、と思う。プレゼントマイクと青山くんは映像で見ている時からずっと安心していられたが、生で観るとより一層声の圧が気持ちよかった。相澤先生は映像で見ると微妙だったのだが、じっさいに見ると全身まるっと相澤先生で、体で演技をしている人の顔だけ抜くカメラはよくないな、と思う。情報量が全然ちがう。常闇くんの人はあの重そうな頭でよくもまああんなに高く飛ぶな、と怖いくらいだった。被り物してあんなに動いちゃダメじゃない? マスキュラーは鳳仙にいたということを後で知った。トガちゃんは本物のトガちゃんだった。トガちゃんって実在するんだな。トゥワイスも本物だった。引きで群れを見て、そのなかで一際輝く個々の体を追いかけるという見方をしていて、とにかくトガちゃんとトゥワイスが出ているとその二人を追ってしまう。特にトゥワイスはおしゃべりな体だった。演者の川崎優作は今度のペダステの金城先輩らしい。期待が高まる。
大満足で、劇場を出ると雨。神保町まで歩いて、源来酒家で遅めのランチ。いつもの麻婆豆腐麺ではなくて、麻婆豆腐カツカレーにしてみた。足し算の味がした。奥さんは卵の炒め物のやつ。おいしそうだった。せっかくなので三省堂をひやかして、雨なので通りの向こうに渡るのが面倒で「しおりをはさみます」の横断幕を写真に撮るのはあっさり諦めた。