2023.10.28

円頓寺商店街、北加賀屋、松本。各地で本のイベントが催される週末で、あちこちにZINE が連れていってもらえている様子を確認してはにこにこする。

秋晴れの電車のなか、ぽかぽかと照らされている奥さんとごきげんよくお喋りしていたら、不意に仲睦まじいふたりに対する愛おしさが溢れて思わず奥さんの腕を取って強くしがみついた。血が止まりそう。そう奥さんは言ったので、慌てて放す。

きょうは不動産ツアーのために出かけていて、物件を見ながらふたりにとってなにが嫌でなにを好むのかを確かめていく。リノベーションも視野に入れて、可変な構造と手を出せない構造のちがいについて面白くきいた。車の後部座席に乗るとかならず眠くなる。引っ越し。手間を考えるととんでもないから、とにかくわくわくしたい。どうしたらわくわくするのだろうか。土地への憧れも、家へのこだわりも、ないような気がしているがじっさいに見てみるとある。このぼんやりとしたものをわくわくにまで形をつけてやらねばならない。

表参道まで出て、原宿方面へと歩きながらミッフィーや石黒亜矢子のあれこれを眺める。そのまま渋谷の外縁をかすめるように駒場東大前まで歩いた。たっぷりの散歩。途中サイゼリヤで甘いものを食べて休憩した。

円盤に乗る派『幸福な島の夜』。俳優の身体に不自然な負荷を強めにかけることで発話されるテクストそのものを際立たせるというsons wo: からの方法は、今作ではずいぶんソフトになっており、俳優の身体はほとんど自然な状態で、ほとんどよくある小劇場の身体に近付いている。それでも身体よりもテクストが前景化する味わいはそのままで、無理の仕方がミニマルになっていると感じた。そのぶんこちらもリラックスできるから、かなり笑えた。畠山峻さんの佇まいがとてもよくて、居るだけでにこにこしてしまう。円盤に乗る派は見る側の気合いや気分に関係なくいつだって無理なく見られるのがいい。本当はソファに深く腰掛けて缶ビール片手にポテチとか食い散らかしながら観たい。

さらに代々木上原まで歩いて、ブータン料理屋でおいしいモモを食べる。胡瓜の和え物にはしびしびと山椒が効いていて、唇にピリついた感覚がのこる。エマダツィというチーズと唐辛子の煮込み料理が好みで、家で作れるかしらと考える。

アイスを買って帰ったけれど、二万歩強も歩いて疲れていたから、お風呂を出たら早々と眠った。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。