ハッと目が覚める。外はまだ暗い。奥さんに呼ばれた気がしたけれど、奥さんは暑そうに布団をはいだりかけ直したり忙しそうではあったが、むぅむぅ寝息を立てていた。スマホを開くと五時半で、フヅクエのメルマガが届いている。しばらく目を瞑って頑張るが、諦めて今週の日記をぜんぶ読む。足の裏に違和感があって、揉むと冷たい汗が噴き出る。くるぶしの周りや、足の甲を流すように押し込んだり、入念にやっていると、ようやくカーテン越しに空が白んじてきたことがわかるくらいになった。七時半に間違えてセットしていた目覚ましが鳴る。奥さんが枕元の水筒に手を伸ばすのが見えて、ようやく眠気がやってくるので諦めて昼前まで眠ることにした。それでもあんまり寝た気がしない。縦になって三十秒でブランチのオムライスが出てくる。奥さんは、縦になって三十秒で悪いんだけど、拒否権はないから、と優しい。
奥さんは昨晩『刀剣乱舞』の舞台を観に行って、来週は『西遊記』だ。それで気分を盛り上げるために「悲伝」の明治座のやつを見返すとのことで一緒に見ていた。この規模の舞台で、これだけ目で語る芝居をするというのはすごいことだな、それをちゃんと抜くカメラもすごいな、などと思った。2.5次元舞台は映像がほとんど前提にあるから、キャパの大きい舞台に映えることと同じくらい、アップに耐えるだけの細やかな芝居も求められて、それがどうして両立できるのだろうと毎回驚く。手元には今月の『文學界』があって、ちょうどいとうせいこうと九龍ジョーが『刀剣乱舞』をビックリマンチョコのように、「世界」だけを先に用意して、物語はあとからどんどん勝手に出てくる、というような話をしていた。
夜はゆにここカルチャースクールの企画で、香山哲が講師の「完成させるためのゲーム教室」を受講。習い事とか15年ぶりくらいで、人から何かを教わるというためにわざわざ自分にお金や時間や手間をかけてあげてるというだけでいい気分だった。今回は座学が中心で、手を動かすのは来月までの宿題として準備されるみたい。お話を聞いているだけで、うおー作るぞー、という気持ちになってくる、いい時間だった。手許のメモには落書きばかりが残されて、作る作る言うだけ言ってる『poïétique』の三号のアイデアがようやくそれっぽいところまで煮詰まった。ゲーム作りを教わりながら、ZINE のやる気が出てくるというのはいい感じだった。とにかく何事もまずは完成させる、そのために実現可能なプランを立て、発表にこぎつける。発表してフィードバックをもらって初めて「作る」というのは一巡する。そういう基本のマインドを確認できて満足だった。手を動かそう。