2025.09.05

この数日来、お風呂に入ると、なんなら手を洗うだけでも掌がものすごくしわくちゃになる。なんだろうかと思っていたのだけれど、きょう乾燥した手を眺めたら表皮が全面的に剥けそうになっていて、なるほどね、と思う。脱皮の季節か。気圧のせいか、猫が甘えたでずっと鳴いている。ヒトは残業である。

これは昨日だったかもしれないけれど、階段の窓のむこうから一日中キッキッキッキ、という、錆びかけた鯉のぼりの金具が軋むような音がひっきりなしにきこえてきて、外のどこかで工事でもしていてその音かと思っていたし、スピーカーから変な音楽を流していたからその音かもしれず、変な音楽は今日はおしゃべりなルドンの声とも混ざり合っていていい感じ。けれど金属音は夜まで続き、鳥だろうかと検索するもよくわからない。思い切って鳴き声だけで検索してみると、虫だった。鳥で検索すると見つからないわけだ。ちょうどnote で台湾の環境音を模倣する鳥の話を読んだところだったのもあり、鳥だとばかり決め込んでいた。検索とは、間違った思い込みがあるうちは正解に辿り着けない行為だ。YouTubeで確認するとまさにこの虫で、カネタタキだ。コメント欄に、まさにいま家にこいつがいて、スピーカーから流れる声とユニゾンしだした、などと書かれており、侵入はありふれたことらしい。虫の死骸などを食べる益虫だし、放っておけば餓死するだろうが、とにかく夜でもひっきりなしにうるさいとあり、退治したいが物影に潜んで発見は難しいらしい。諦めかけていたけれど普通に白い壁にくっついていたのでやっつけた。虫も鳴かずば討たれまい、と奥さんは言った。外に逃がすという選択肢もあったかもしれない。それでも、潰してしまった方がはやいし面倒も少ないから、殺した。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。