2026.04.20

ふたりとも賃労働に追われている。風呂場で脇や下腹部の体毛を剃る。どうしても坊主頭然とした剃り残しがあり、こういうのってどうやったらつるつるになるのかしらといつも不思議に思う。夕食のあと、数日ぶりの『プロジェクト・ヘイルメアリー』。友人同士が決死の思いで「触れ合う」シーン。読む声がいつも以上に熱っぽくなり、なんならちょっと泣きそうで声が震えたのを元気のよさで乗り切った。ふだんは一時間程度の上演なのだが、この日はたぶん一時間半くらいやった。それでもうすっかり寝る時間で、日記は諦める。睡眠を削ってまでやるものではないが、移動や事務所での盗み仕事として書くリズムがいちにち在宅だとうまく動かせない課題はずっと解消できないままだ。在宅での賃労働の場合、日記の代わりに何をやっているかといえば、Duolingoの広告で出てくるたびに夢中でやってしまうスイカゲームの亜種みたいなゲームやりたさにとうとうインストールしてしまったグルメジャーニーというゲームで、しかもやりたいゲームをやるには別のパズルでレベルを上げなければいけないようで、やりたくもないパズルを黙々とやっていた。今期のアニメをザッピングしながらやっているのでまったくの虚無ではないのだが、いや、虚無だろう。心を空っぽにしたくてやっている。それは日記も同じだが、であれば日記のほうがましな気がする。でも日記以上に空っぽになれるものが目の前にあり、人目を気にしないでいいならそっちをやっちゃうよね。日記が書けていないとぼやくと、あしたは出勤だから大丈夫だよ、と奥さんは応える。わかられ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。