2021.06.07(2-p.53)

昨晩の飲み会はいつまで続いていたのだろう。途中からマイクとカメラを切ってラジオのように聴きながら寝てしまって、朝になると自分だけがずっと通話しっぱなしの状態でいた。深夜になってあたらしい恋人ができたこと、いまの恋人とのこれからなど深夜っぽい話が繰り広げられていて、混ざりたいな、と思いながら眠っていた。気がつけばあの家を出てからもう五年? 六年? つまり各々それだけ歳をとった。なんだかすごいことだ。落ち着いたり落ち着かなかったり、顔はそこまで変わっていなくても、やっぱりどこかしら変わっていく。生きているのだから。

朝起きてシャワーを浴びて仕事に取り掛かるがまったく集中できない。奥さんもあまり眠れなかったようで、寝室が一緒なのだからそれはそうで、昨日は申し訳ないことをした。今年初めて冷房をつける。今日はやけにカラスが多い。頻繁に鳴き交わして情報交換をしていて、カーテンを開け放したまま昼寝をしているとだんだんと晴れていく空を八匹ほど横切っていくのが見えた。思えば昨日も近所のゴミ袋はほとんど荒らされていて歩道に中身が散乱していた。あれもカラスであろうから、たぶん休業要請で飲食店から出るゴミが減っているから、食料を探しにここまでやってきているんじゃないかと奥さんは言って、僕はその慧眼に感心した。奥さんによると東京のカラスはほとんどが朝霞在住で、米軍跡地の林を寝床にして、昼は出稼ぎに来ているらしい。近所では食い扶持を賄いきれず、ふだんより遠出を余儀なくされているのだろうか。山羊よりはマシ、と奥さんは言っておそらくヨーロッパのどこかの人通りが無くなった街を行軍する山羊のことを思い出してのことだったが、僕はカラスの方が怖い。ヒッチコックのせいで襲われた時の悲惨さが具体的にイメージできてしまうから。

夜は奥さんがとうもろこしの炊き込みご飯を炊いてくれる。食後は体力の限界を迎えてしまったようで、苦しそうに眠る。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。