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近所の蕎麦屋の、感染防止でなく、拡大に資する為の呼びかけ。嘘です。ここでは目的ではなく原因を示すものとして「ため」の用法だろう。そんなことはわかりきっている。カツ丼セットの衣が厚くて、お腹の中で膨れていく。もうセットものはきついのかもしれない。十五時前だった。今日は椅子に座って落ち着いていた時間などない。起きたのがそもそも昼前だったがいつの間にか同居人は出かけた後だった。寝室を出ると引き戸の前に段ボールが置かれていて、ごんぎつねのようだった。段ボールは自家からの荷物で、先日の名古屋で買った本を、実家に置いてあった『竹光侍』の全巻と併せて送ってもらったのだ。なぜかというとTOUTEN BOOKSTORE で『東京ヒゴロ』を買ったので、気分は松本大洋なのだ。中学生の頃から大好きで、ヴィレッジ・ヴァンガードまでけったで向かっては買い込んでいた。A5版で出ているものはほとんど追いかけているのではないか。『ルーブルの猫』は大判で買った。2010年以前のものはじわじわと実家からこうして持ってきている。そういえば『Sunny』は完結まで待とうと思ってそのまま読んでいない。松本大洋と『シャーマンキング』は十代の僕の世界に対する態度を決定づけた。それで問題はこの一箱、なんならたぶんあともう一箱分、本が入り切らないということだ。つまりすでに入り切ってはいなかった、普通に溢れてる。部屋のそこここになんとなく置いてある。そろそろ目を逸らすわけにはいかない。まずは長い在宅生活で荒れ果てた部屋の手入れから始める。着手してしまうと楽しくて夢中でやる。昨晩Plastic Tree の話を奥さんから聞いて音源も聴いていたら懐かしい気持ちになって、引っ張り出してきたiPod classic でスムルースの『ドリーミーワームホール事典』を聴きながら手を動かす。一番大きい本棚の上部には書類を積んでいたのだが、これをクローゼットの中に仕舞い込み、分散していた大判のものをここに集約する。騙し騙し複数のブックスタンドやボックスなんかを駆使して並べていく。ほとんど天井までの本は、やっぱり迫力がある。いよいよ地震が来たらひとたまりもない。そうこうしてスペースを捻出して、いま出窓のところでパルプボードボックス2段を横置きににして使っているそこにもう二つ同じ棚を積むのが良さそうだと判断。支度をして家を出た。まずは駅前で蕎麦。腹ごなしに歩く。
住宅街の上空に凧が揚がっている。紐は見えないが、どこから揚げているのだろう。せいぜい高くて三階建ての一戸建てが密集するあのあたりに凧揚げできる余裕があるとは思えない。しかし凧はずいぶん高い。おそらく八階とか、もしかしたら十二階くらいの高さのように見える。奥さんと不思議に眺めていると、歩くうちに太陽光を背後にして眩しくて見ていられなくなった。無印で目当ての棚を二つ買って帰る。日差しが強いせいだろう、目がしょぼしょぼしてしまった。帰ってさっそく組み立てる。「温泉マークのオートチューンスペース」というポッドキャストを流しておく。学生の深夜の駄弁りみたいでいい。それでいうとポイエティークRADIO もいい駄弁りだろう。僕は駄弁りが好きなのだ。組み立ては楽しくて、チャキチャキ終わらせて本を入れ込む。奥さんは安定のためにインパクトドライバーでビスを打ち込んで三つのボックスを連結する。本を入れっぱなしですごい音を立てるので冷や冷やした。これでずいぶん余裕ができた。しばらくは保つだろう。これで溢れたらもうしょうがない。
夕飯の席では久しぶりに飲酒。バリューブックスから買取キャンペーンで届いた真澄の真赤。美味しい。日本酒はいいなあ。いつか諏訪に旅行したことを思い出す。宿にあった『もやしもん』を読んで、翌日は酒蔵巡りだった。一つの坂に五つくらいの酒蔵があって、それらをぜんぶ回って試飲させてもらうのだ。あれは楽しかった。イルフ童画館もよかったし、また行きたい。
今日はなんだか思い出してばかりだ。おかげで部屋の模様替えもできたし、収納周りの改善もなされた。部屋のなかのモノの据わりがよくなったおかげか、なんとなく最近強まっていた家にいることの閉塞感もいくぶん和らぐようだった。
