2021.12.18

設営からお手伝いする気でスケジュールを計画していたはずなのだけれどまったく起きれない。ここで無理をするとほんとうに倒れてしまいそうだから甘んじて寝る。起きれるのならば起きていたさ、と誰にともなく言い聞かせる。途中で手土産を買う時間は確保して、ギリギリちょうどに着くくらいの時間に出る。豪勢な料理を振る舞ってもらえる場に、あんまり食べ物を持って行ってもな、とはいえお酒もみんな持ってくるだろうし、と何を買っていいのかさっぱりわからないままターミナル駅をふらついて、主催がパーティを終えた後にほっと一息つくときに役立てばいいなとお茶を買っていくことに決める。

電車の中では『第五脳釘怪談』。リュックには『残穢』も入れたつもりだったが入れていなかった。怪談にとって恐怖とは何か。はたして恐怖は怪談に必要なのだろうか。そういうことを考えていた。先週分の阿久津さんの「読書日記」を読んでいて、ネットプリントを出力していただいていたことを知る。楽しいな。

駅から歩きながら朝から何も口にしていない。これからたくさん食べるのだから飲み物だけでいいなと思い、Google Maps に「コーヒー」と打ち込むとちょうど今いる交差点から脇に入ったところにいい感じのコーヒー屋さんがあるらしい。寄り道していくことにした。カフェラテを飲みながらのんびり歩いていく。途中にトンネルを潜り、怪談を読んだばかりだからソワソワするかと思ったけれど、昼間であることを差し引いてもとてもヘルシーな感じのするトンネルで、こんなに爽やかなトンネルがあるのか、と思う。トンネル内だと感覚が狂うが傾斜がきつく、すこし汗ばむ。

ゾンビ友達のRyota さんと、そのお友達で寅さん友達でもあるあやのさんと、そのお友達たちの集うクリスマスパーティーで、ほとんどが知らない人たちなので緊張する。エントランスまではRyotaさんが迎えに来てくれる。そこからも主催ばりの活躍を見せていて、ずっと動き回っている。これで僕はRyotaさんにくっついていれば孤独を感じないで済むという目論見を外した。なけなしの勇気を振り絞って設営のお手伝いを申し出て、風船を黙々と繋げたりする。風船が繋がると愉快な気持ちになった。『A3!』が好きな方がいらして、僕も自己紹介でシトロンが好きです、と言ったのだが甘えびキャンディが好きと言えばよかったかもしれない。あとはだいたいネロちゃまの話かゾンビの話をしていて、マグロのモツをパクつきながら「疲れた時はゾンビ映画で飛び散る内臓を見るとすっきりする」などと論じるすっかりやばいやつになったりもした。彩豊かなピンチョス、ハニーマスタードでいただく手羽、じゃがいものガレット、カプレーゼ。どれもたいへんおいしかった。

あっという間にマンションの集会スペースの利用時間が近づき、酒瓶からラッパ飲みする人、黙々と食べる人、皿を洗う人、など皆で一丸となって散会。僕はしれっとRyotaさんにくっついていってあやのさんの自宅でそのまま飲み続けた。おうちの猫が僕のリュックを気に入ってくれて、上に乗っかってくつろいだり爪を研いだりしてくださる。ありがたいことです。夕方になって一足先に帰ることに。あやのさんの連れ合いの方にバス停まで送ってもらう。

マスクの中の呼気で酔いがどんどん回り、帰宅する頃にはふらふらだった。すでに自宅でもクリスマスパーティーが始まっているが、料理ができるまですこし眠らせてもらう。起きて、パーティー。こちらも豪勢な料理。きょうは寝て食べてしかしてない。ローマ貴族のようだ。もう食べられない、という青い顔で席について、でも食べ始めると美味しくてどんどん食べる。茄子のラザニア風、ライスコロッケ、ローストビーフ、なんかおいしいもののゼリー寄せ……、むしろ空腹だったようで食べているうちに酔いもマシになっていく。ケーキまでちゃんといただく。食後の会話が面白かった。語彙力がなさすぎて、おいしい、とか、楽しい、とかしか言えないという話。けれども言語化することで内容が貧しくなることというのは確かにあって、おいしい!とかすっごくエビだ!とかいう声でしか表せないものがある。それは語彙の貧しさではなくて、むしろ言葉の貧しさに敏感であるからこその行為だろう。

きょうはずっとおいしかった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。