奥さんは友達と昼から飲むので出かけていった。共通の友人ではあるので僕も行ってもいいとのことだったけれど、水入らずのほうが楽しかろうとお留守番することにした。昨晩リビングで日記を書いていたら視界がゆらゆらと揺れる目眩がはじまって、慌てて寝室にいた奥さんにslackで助けを求めてそのまま寝てしまったのもあってすこしだけ体力に不安もあった。
郵便局にレターパックを持っていくついでにビールを買う。寝室にテーブルと椅子を展開して、スクリーンにKID FRESINO とAマッソの企画『QO』を眺めながらおせちと麻辣青豆とビールをよろしくやる。なんだか贅沢な気分になる。Aマッソは僕は初めて見る。名前はよく聞いていた。年末にやっていた「このテープもってないですか?」というテレビ番組が見たくて、となると同じ制作陣の過去作「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」を見てからにしたかったが、それであればAマッソのイメージを先に作っておいてからの方が面白かろうということでKID FRESINO から入ってみようという目論見だ。コントと演奏が交互にあるなかなかに転換が難儀そうな構成で、映像だと一時間強だけれどライブハウスではもうすこし待ちの時間があったのだろうか。部屋でふんぞり帰りながら見るにはちょうどよかった。続けて「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」をiPadで再生して、内容と形式の取り合わせの妙は面白かった。ただ二つのエピソードがどちらも厭さを子供を酷い目に合わせることで作っていて、僕は子供が犠牲になるのはフィクションでも許せないみたいであまり楽しめなかった。子供がどちらも女の子であるのもほんとうに嫌なタイプの厭さを増幅させていて、僕はこの国の多数派の心象みたいなものを信頼していないので、子供を性的にまなざすみたいなことを前提とした作劇にはホラーの受容の手前で拒否反応が出る。ホラー作品においてミソジニーを素材として扱うのは、もうこの国では無理なんじゃないか。素材として距離を取るには、屈託のないミソジニーがありふれていて、素朴に厭の素材として採用する態度はどうしても雑に感じられてしまう。このダメさは「このテープもってないですか?」も同様で、先日の『呪怨』の残像もあって高橋洋の功罪を考えてしまう。日本のホラーはそろそろ女性の表象から搾取する方法を捨ててほしい。
気分転換にぎりぎり日が落ちないうちに出かけていって、小指のリングがすこしゆるかったので指輪のアジャスターみたいなやつを買う。ぴったりしていい感じ。秋葉原に移動して、とらのあなはもうないのだった、メロンブックスに初めていった。地図を見て向かったのだがうまく見つけられず、ビルの奥まったところから地下への階段を降りていく立地で、路面店だと思っていた。降りていくと肌色がすごい。目当ては今年の『ワダメモ』だ。これはすぐに見つかる。大事に一冊抱えてレジ待ちの行列の最後尾を探す。さまざまに誇張された胸部と乳輪に気圧されてちゃんと探せなかったけれど、午後さんが寄稿している同人音声のやつはまだみたいだ。順番を待ちながら細分化されたエロのジャンルを眺めていて、いろいろあるなあと思う。なにか反応するものがあれば買ってみようかとも考えたが、どれも同じに見えてしまって僕にはまだこの世界の肌理が感じ取れないのだろう。前を並ぶお兄さんはハッと目に止まった一冊をぱっぱと抱えていって、市場のセリのような、訓練された「目」を感じた。
神保町まで歩いて、東京堂書店に初詣。ぐるぐる一階の軍艦から見て回って、今週は『調べる技術』という本が売れているらしい。たしかに気になるし、調べたい。でもウィンドウのところにあったものも、一階の棚も本の印象がぺらっとしていて書影のプリントだったかもしれない。いまは在庫切れなのだろうか。それとも薄い本なのだろうか。近づいて確かめることはせず二階、そして三階へ。海外文学の評論の棚に、いまも『プルーストを読む生活』が複数面陳されていて、これは感謝のドカ買いをするべきだな、と気が大きくなる。いつか買おうと思っていたフーコー『性の歴史』を四巻まとめて棚から抜く。もともとここにはあるだろうと期待していた『変革する文体』も掴みとる。さらにはここにも『調べる技術』があって、今度は手に取られた。国会図書館秘伝のレファレンス・チップスと副題にある。「司書の奥義」が学べるらしい。絶対にいい本じゃん。これも買う。閉店間際のレジ打ち。二万三千円くらい。ちょっと怯んだ。買いすぎかも、と思ってもなかなか一万円を超えないのが本だと思っていたから平気で一冊四千円を超えるのばかりだったのを見逃していたというか、最近の僕は値段を見ずにレジに持っていくんだなとうのが知れた。考えてみれば年末年始の散財も、あまり値段を覚えていない。カードの請求が心配。こうやって人は無自覚に借金を膨らます。節約しないとな、と歩き出して、たい焼きを買って食べながら帰る。
奥さんもとても楽しい一日だったみたいで、よかった。日記を書いていたらすっかり夜更かしだ。
