2023.01.15

マルイの屋上でキャロットケーキを食べて、シネマート新宿で『編集霊』を観る。予想どおりのダメな映画。古谷大和に舞台より映画を優位に置く役をやらせるところは可笑しかった。古谷大和は明らかに映像より舞台映えする俳優だし、なによりこんな零細映画よりもいいギャラを稼いでいるはずで、そんな彼に映画への憧憬を象徴するような役を託すところにアイロニーがある。序盤の低予算映画への自虐的自己言及もいいのだが、かなり中途半端。制作を、妥協にまみれた日々の仕事として担うものたちの忸怩と矜持を描いた作品というのはだいたい名作なのだが、忸怩しかなくて矜持を示すだけの意地を作中誰一人示さないから結局この作品自体が妥協の産物としてしか現れてこない。なによりショットがどれも退屈なのだ。まったく動きがない。こういうダメなお手本に触れると僕は映画は小説と同じでとにかく運動なのだとよくわかる。映画も小説も猫が黒目を丸くして凝視するような動きさえあればもう楽しいのだ。動いてさえいればこちらは嬉しくなる。動きを内包していない作品はダメです。悪口を言いたくて見たようなものなので満足。でも、古谷大和が作品に恵まれるといいな、とは真剣に思う。

池袋に移動して、奥さんにくっついてアニメイトを見たあと僕はメロンブックスをうろついたけれど午後さんの同人音声の本はまだ入っていなかった。プレゴで夕食。トマトの前菜で始めて、スパークリングワインはすぐ干され、無花果ブランデーのソーダ割りを頼みつつ、マグロとキャベツのオイル煮、オイルをバケットで舐めとる、チーズリゾット、豚のビール煮。映画ってのは動きなんだ、『グリンチ』が大好きな猫がいただろう、人間だって一緒だ、とにかく動いてりゃ楽しいんだ、『カニを喰べる。』の冒頭の長回しは立派だ、と酔っ払いがまくしたてていて、楽しそうだった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員。プルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、「家」の別のやり方を模索するZINE『ZINE アカミミ』などを制作。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。