一九時から蟹の親子さんと録音の約束。ギリギリまで家で仕事。今日の奥さんはぐんにゃり。僕は在宅の日は寝室の布団をあげて空けたところに折り畳みの机と椅子を出してきて作業フィールドを展開するのだが、夕方ころにリビングで仕事をしていた奥さんが寝室に入ってきて、無精して畳まないでいたもう一方の布団にゴロンと寝転がりたまに寝落ちたりしていた。横で自分ではない生き物が寝そべっているなか仕事をするのはなかなかよかった。弱っている奥さんはかわいいね、と声をかけると、どんな状態でも「かわいい」しか言わないのは怠慢ではないか、いまのあなたの私に対する「かわいい」は「やばい」とか「エモい」と同じくらい多義的で、思考を節約する便利な言葉になってる、と指摘されて図星だった。あなたは具合が悪い時も負のオーラを周囲に撒き散らかさないし、自己憐憫に陥ることもしないで、ただデンとその場に横たわる太々しさがあるから素敵だ。そうやって堂々と自分のしたいことをして、したくないことはしないといい、いやなことはいやだと明言しながらぼえーっと天井を眺める様子はなんだか可笑しくて、とてもラブリーだね。
蟹の親子さんとの録音はたいへん楽しく、でもやっぱり僕が話しすぎてしまった気がする。奥さんではないゲストとの回ではだいたいああ、喋りすぎてしまったな、と自分のホスト力のなさに幻滅する。会話、それは難しい。会話教室みたいなのに通ってみたいが、おそらく教室の雰囲気が無理で五分で逃げ出すだろう。日記の話にとどまらず、具体的なZINE づくりの話を根掘り葉掘り聞けたので聴くと本を作りたくなるようないい回になったとは思う。聞き返すのが楽しみ。
奥さんは体が冷えて、頭が痛いらしい。頭によい薬を飲んだりもしたが、効果の程はどうだろうか。かわいそうに思って頭を撫でていたら、どう、頭よくなった? と訊いてくるので、念入りに頭蓋骨の形を確認して、頭の形はいい、と応えた。これもディパシオのおかげだろう。僕の頭蓋骨はデコボコです。小学生の頃のあだ名はジャガイモだった。頭が変な形だから。