2021.02.15(2-p.16)

気圧が980を下回る。僕も奥さんも平気なわけがなかった。僕はもうずっと布団に引きこもっていて、『史上最大の革命』を二章読んで、ついにヴィルヘルム2世が退位する。みすずが読めるから僕はまだ大丈夫、と思う。後手後手に回り続け、やることなすこと裏目に出るドイツ政府に今日ばかりはなんとなく同情してしまう。何をやってもうまくいかないという時期はある。コーヒー豆が切れそうだったり、アルフォートが切れていたり、外に出るべき理由はあるにはあったが、もう明日でいいや、と諦めて、雨音を聞くともなしに聞いていると、図々しいカラスがベランダで雨宿りしながらクウクウ鳴いていた。

昼休みに初めてclubhouse で友達と話すのをやってみる。気の合う友達というのよりも、こうして美意識や環世界があまり馴染まない友達の存在のありがたさを感じる。僕だけだったらもう一生このアプリを開かなかったかもしれないが、屈託なく、やってみようぜと連絡をくれたからのこのこ乗っかってみたらそこそこ楽しい。毎回この友達と話すと同意はできないが否定はしないで面白がるみたいなおしゃべりが為されて、そういう緊張感はありつつもお互いのスタンスを侵犯しないというくらいの信頼はあるようなおしゃべりのありがたさを思う。奥さんともそういうおしゃべりではあるのだけど、友達という距離感、ぜんぶをぜんぶ曝け出すほどもたれかかってもおらず、なんなら実態よりも格好つけたいみたいな気持ちが湧くくらいの関係が、今は不足しやすいのかもしれない。

もう午後はヴァイマル共和国のこと考えるのはやめにして、ひたすらSE.RA.PH に潜っていた。Twitter も開かずに延々と聖杯戦争を進めつつ、スマホではFGO の周回を行っていて、とにかくfate づいている。こうやってゲームばかりやっているのは、ごみくずのような気持ちにならなくはないが、漫然とSNS やエゴサの巡回を行ってしまうよりもどこか能動的に選び取ったごみくずのような感じがあって、すこしだけ堂々とした気持ちでいられる。それでどんどこゲームをしていた。疲れて昼寝すらした。

こうやって胸を張って無為な一日だと言える日があるのはいいことだ。いつだって日々は無為もしれないが、我ながらここまでぐずぐずと過ごすのはすごい、と呆れられる日を作ると、他の日がましに思えてきたり、他の日はましにしようと気分が変わったり、べつに毎日これでいいじゃんと気がつけたりする。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。