2021.03.07(2-p.16)

母がこちらに来ているというので清澄白河でベトナム料理を食べた。妹たちも一緒だった。食べ終わってお茶でも、と思うがそもそも清澄白河は京都の駅より南の方っぽいと言うか、下町の土着の人たちがいまだに強く、大資本が入ってきていない感じがして、個人商店があるといえば聞こえはいいがそれもかなり散発的でそれぞれに距離があり、これが都営しか走っていない街、と思う。さらには室内での密度に敏感ないま、五人の客が歓迎される店はかなり少ないことが知れた。空振りのたびに次の候補まで一〇分以上歩くことになるから、結局三時間くらいただ歩いていた。寒かったから僕は早足で、だから歩きながら喋るということもなく、ただ各々あてもないままぶらついていた。合流前にお願いしていた額装の受け取りに北上して、そのままなんとなく森下の方まで出たが、そこでもやはり難しく、そもそもが東京の特にチェーンに塗りつぶされていないエリアというのは二人までは心地がいいがそれ以上となると途端に入れるお店が限られてくるのだということに思い至る。チェーンも好きだな。これまでずっと二人で出かけているからこういうことになかなか気がつかない。ようやく隅田川沿いのレストランカフェで一息つき、そのまま解散。

きのうから一晩考えたお誘いの連絡を送っていて、よいお返事をいただけて嬉しい。楽しみな予定が増えた。三月はよく約束をしてしまう。気忙しくしていないとたぶんすぐにダメになってしまうから。POP LIFE の最新回が面白い。

それで奥さんと二人で恵比寿に移動して、しかし広尾の方が近いと知れてそちらで降りてgallery deux poissons へ。2015年の年末に結婚指輪を買ったギャラリーで、いまやっている展示が気になって見に行ったのだった。もともと奥さんの指輪がきつくなってしまって、お直しでも良かったのだが指の雰囲気が変わっているのだったら指輪ごと変えてしまうのもいいだろうということで色々と見て、結局いまのものと同じ作家さんの、今よりうんとごついやつ──それは最初の時も候補の一つだった──に決めた。最初の指輪よりも高価になる。考えていた予算をあっさり超過していたが、二人とも簡単にその気になって、これにしよう、と決まる。受け取りは一ヶ月半くらいあと。三月は結婚したり、引っ越したりと、なにかしら気が狂って大ごとを起こしがちなのだけど、今年は落ち着いちゃってるねと話していたばかりなのだけど、結局こうして大金を動かしている。結婚満五年の記念ということでなんとか予算化しようということになった。次は十年後とかにまた買い替えるかあ、などと話しながら歩く。楽しみだね。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。