2025.01.02

朝は出汁の効いた蕎麦屋のチキンカレーに蕎麦を絡めて食べる。スーパーのプライベートブランドの蕎麦はかなりおいしくないのだが、カレー蕎麦にすればそこそこいける。カレーがおいしいからだ。

往復五時間かけて、二時間の会食に参加した。電車の中では奥さんとおしゃべりしたり、『哲学史入門』を読んだりした。『哲学史入門』はとてもいい本で、はじめてカントに興味を持った。福尾匠『非美学』は楽しみにしていたのだが、カントの箇所でその独特の語彙がよくわからず、かといってきちんと調べる気にもなれず、読み流していたのだけれど、インタビュー形式で解題されていくのを読むと、遡及的に、ああ、そういう話だったのか、それだったら普段考えていることとすごく関係があるっぽい感じがするな、と楽しくなってくる。そもそもの問題意識がよくわからんな、と敬遠していたものが、じつは自分ごととしても強く関心を寄せるところとかなり近しいことに気がついて一気に興味津々になるというのはよくあることで、これがあるからよくわからないものでも我慢して読んでおくものだなと思う。とりあえず触っておいたという記憶は案外のこるもので、親切な入門書を読みながら『非美学』のカントの件の記憶を再読しているような手応えがあった。年末に『岩波 哲学・思想辞典』を買ったのもあって、今年はなにかしら古典にじっくり取り組んでみたいような気分があって、誰を読むかを物色するという期待もあったから、これはもしかしてカントなのかな、翻訳どれがいいかな、と下調べするのも楽しい。三巻まで読むとまた変わるかもしれない。駅を降りて、なんかカントってこういうことっぽい、だとしたらすごい読みたい気がする、と奥さんに話す。で、けっきょくそこでいう理性の対義語ってなんなの?と奥さんに尋ねられ、答えられなかった。まだよくわかりません。雰囲気でわかったっぽくなっている時、嬉々として奥さんに話すとあっさりとわかってなさが炙り出されるからありがたい。

親類の会食は、遅めのお昼で十四時半開始と聞いていた。いつもぎりぎりになるから十分前にはついたのに、十五時からに変更になっていたらしい。つごう四〇分の前入りだ。仕方がないから近所の公園で日向ぼっこ。なんだかんだですぐにみんな揃う。日本食のコースで、お刺身がおいしかった。アルバイトの子はお酒に不慣れそうで、日本酒を頼んだら、ハイ、という。冷やでお願いしますと声をかけると、また、ハイ、といって引っ込んで、すぐ戻ってくる。常温かお燗かどっちがいいですか、と聞いてくれたので、あ、ひやはできないのか、じゃあ常温で。すぐにベテランの店員がやってきて、お冷はここの水差しに入っていますからね、と教えてくれる。ああ、冷酒と水を取り違えたのね、とわかり、お水はそこにあるのはわかってます、日本酒を冷やで頼んだつもりでした、と伝えると、ああそういうことかと引っ込む。結果、日本酒が常温と冷やで両方来たので笑った。酔っ払った。馴染みのない駅と直結した商業施設のトイレを奥さんが借りているあいだ、そこにあった本屋をのぞく。週プロ増刊号『プロレスラーカラー選手名鑑2025』を買う。帰りの電車でふたりで読む。けっこう楽しい。去年ははじめての一年ということで、まずは新日本に注力した。途中からDDTも見始めた。今年は他団体も掘ってみたいところ。二〇二五年は、プロレスとカントだな。

帰宅して、満腹感がおさまらないので夕食は抜きに。『復讐 消えない傷痕』をようやく見る。これは、『ゴドーを待ちながら』の映画への完璧な翻案なのではないか。録音で感想をやりとりしているあいだ、猫がずっと鳴いて呼ぶ。暖房が止まっていて、寒かったらしい。ごめん。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。