2021.12.28

寒くて動きが緩慢。思考も行為も緩慢。日記を書いていて思うのは思考というものに完全な独立などありえなくて、この体にずいぶん規定され方向づけられているということ。個々人の体を捨象したかのような言説がありふれているけれど、そういうどこにもありえない視点から冷笑するような態度は、日に日にダサくなってきているように感じる。僕が十代前半の頃は斜に構えて傍観者を気取ることが格好良いような風潮があったけれど、いまやそういう振る舞いはすっかり「おじさん」のものになってしまったな、と思う。自らの無謬性を疑わず、遠くから人を判断したり揶揄したりする態度。取り残されたものが暗いところから他人の足を引っ張るような屈託。そういうの、僕はもういいな。僕はこの体の唯一性を引き受け、いくつもいくつも間違いや矛盾を増やしていきながらも、素直に嬉しいときに嬉しいといい、楽しいときに楽しいといい、好きだなと思うものを好きだといいながら過ごしていきたい。森高千里の「臭いものにはフタをしろ‼︎」を聴いている。

『マジョリティ男性にとってまっとうさとは何か』を読み終えた。先日のON READING のイベントのために準備したメモに、ルチャ・リブロの実践は『トイ・ストーリー4』である、と書いてあったので、最終章の評との共鳴に、おお、となった。『4』は観た当時は複雑だったけれど、今となっては最高だったな、と思える作品だ。作品の好き嫌いも、こうして日々の中で変容していく。どんどん変質していくこと、自身の欲望さえも書き換えられうること。未知のものや理解の埒外にあるものとの遭遇を拒絶し自閉するような態度には、与したくないな、と思う。いつか僕も偏屈ジジイになるのだろうけれど、まだいいや。

毎日の体調の変化に敏感に、友達をそこそこつくって、多少の面倒を引き受けながら、用事をたくさん持っていたい。

『It Takes Two』は一昨日くらいにあっさりエンディングを迎えてしまって、夜の奥さんとの遊ぶ用事がふっとなくなってしまったけれど、まだ『Death’s Door』がある。死んだら交代で進めていって、この三日くらいふんづまっていた難所は今日僕が働いている間に奥さんがクリアしておいてくれたらしい。日記を書き終えたら、続きを遊ぶぞ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。