2010年代の前半、梅ヶ丘のコインランドリーで読んでいた「漫画ゴラク」にはおそらくこれがすでに載っていたはずだ。DMM ブックスで無料で読める部分まで『はぐれアイドル地獄変』を読みながら僕は確信していた。これまで読んだ漫画でいちばん酷くていちばん染み渡るようだった。
僕の精神は限界を迎えるとおっぱいと臓物が惜しみなく出てくる映画を黙々と観続けることを僕の肉体に要請するのだが、今回はその亜種らしい。無料部分のあとは十冊くらい刃牙並の異種格闘技トーナメントが繰り広げられるらしい。興味がある。
とにかく酷いもの、俗悪なものを摂取したい。そういう時がある。けさ代わりに読む人の格好いいハンコが押されたレターパックが到着して、中には『アドルムコ会全史』という本が入っていた。予約していたのだが、四月だと思っていた。もう届く。強烈な装丁にワクワクしていると、目がビカーン、と奥さんが言った。そうだね。
奥さんは副反応なのか、接種翌日の夜のタイミングで夕飯も食べられないほど衰弱していてかわいそうだった。その奥さんを看病しようにもできることのない僕は傍でこの本を試しにパラパラとめくっているつもりでいつの間にか表題作を読み終えてしまった。こわ。この小説は、非常に、漫画ゴラクだったのだ。下品で幼稚なイメージの氾濫。まだ毛も生えていないようなあのころ、風呂上がりにフルチンで廊下を全力疾走したときの爽やかさを喚起するような小説で、幼稚なまま見てくれだけ取り繕った僕はケタケタと笑いながら体毛を全剃りしたのち廊下を全裸で駆け抜けたような心地になっていた。
ヤニ臭え喫茶店の汚ないソファに浅く腰掛けて、氷が溶け出す前から限界まで薄められた味のする色のついた汁をすすっているような時間が必要な人間にとって、こういうものが必要な時がある。しかし、ほんと絶妙なタイミングで届いたものだ。元気な時に届いていたらすこし読んでそのままベランダから国道へ投げ捨てていたかもしれない。