2022.06.28

一雨きたら少しは楽だろうか。いやしかし、それはそれで湿気がより一層ひどくなるだけだろう。一瞬でも雨降りを望んでしまうほどに、暑い。梅雨明けをあんなに待ち望んでいたはずなのに。一層しんどくなるばかり。『ビッグ・リボウスキ』だったっけ、壁紙がぐしょぐしょにめくれちゃう映画。あれを思い出す。

出勤して、お腹の調子が悪い。さいきんずっと悪い。漢方の配合を少し変えてみて、でもこれだとお腹痛くなっちゃうかもなので、と二週間分だけもらったものはとりあえず1週間服んで問題なかった。まだある前の配合のものから片付けていこうと戻して以来お腹が痛くて納得がいかない。遅効性? とはいえもうずいぶん経つ。

知性爆発。それがこの日記に僕が期待していることだ。もちろん才気煥発のまちがいだ。この知的なんだかバカなんだか、どこまでわざとなんだかわからない塩梅で日記を書いていく。嬉々として揚げ足をとりに行こうとすると損をし、遠目に観察しているとすぐに化けの皮が剥がれる。そういう塩梅だ。ともかくすこしは知的でありたいものだ。そこにこの暑さだ。暑いともう、なんていうの、なんかでろでろになっちゃうじゃん。すっぽんぽんで川とかに飛び込みたい。そのままもう流されていたい。岩とかにぶつかるのは痛いからそういうのはないということで。じゃあ流れるプールでいいか。でも流れるプールですっぽんぽんは怖いな。ほら、バカみたいだ。バカだ。もう僕に知性は一欠片も残っていない。腐りやすい粘膜質の物体としてのあけすけさだけがある。ぐずぐずに溶けていくだけだ。キッチンがすぐ臭くなる。苦手なタイプの体臭がきつくなる。

帰宅して、くたくただ。本が読める気がしないが、ここは意地だ。『第四脳釘怪談』をすこし読む。それから知的な映画でも観ようと考えた。タイムラインでダーク・キャッスル・エンターテインメントの話題が目に入って、『ゴーストシップ』を観ることにした。二〇〇二年だから、僕は一〇歳とかか。怖そうで観る気にならなかったけれど、ポスターにどうしても惹かれるものがあったのを覚えている。配信時代になって、子供のころ恐ろしかったり、えっちそうだったり、とにかく惹かれるけれどもレンタルをねだれはしなかった作品をどんどん観ることができるようになった。ダーク・キャッスル・エンターテインメントは、Wikipediaの概要を読むだけで、僕があと二〇年早く生まれていたら大好きな製作会社になっただろうなというくらい、いまの僕の趣味嗜好とハマりそうだ。どんどん疲れが募って、三〇分ほど観て寝落ちてしまった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。