2022.06.30

今日もすごい暑さ。でもせっかくのお休みなのだ。果敢に出かける。

池袋は交通の便もよくないし、行くたびに方向感覚を喪失し怖い思いをするからなかなか足が伸びない。用事があっても埼玉出身の奥さんと一緒でないと安心できないのだが、今回は一人で乗り込む。円盤に乗る場のペーパーにも寄稿いただいた青柳さんのお店にどうしても行っておきたかったから。コ本や。看板も見つけられなかったがホームページで何度も見た医院の中に堂々と入っていく。エレベーターを出るとすぐに本。そこは、あまりに素晴らしく、正気を失ったため、本を買い過ぎた。「自分は買書の病気なのかもしれない」と恐ろしくなるお店はいいお店だ。棚を巡る足も、本を引き抜く手も止まりそうになかった。この前ふた箱くらい減らしたばかりなのに……

まっさきに目に留まったのは空飛ぶスパゲッティ・モンスターの福音書こと『反★進化論』だ。これは買うでしょと決めて、棚を奥までじっくり眺めていく。突き当たりの「美術手帖」コーナーで折り返して、復路で二回目の検分。途中で展示コーナーに入ると、エアソファという言葉があるだろうか、暗がりには空気で膨らませるタイプの寝そべりソファが三つ置いてあって、正面では映像が投射されている。真ん中のソファにながながと体を伸ばして映像を二周観る。佐藤瞭太郎という人のものらしい。Cyriak の増殖映像が好きな身としては人形が水のようにこぼれ、あふれ、もつれていく様を眺めているのは不穏な楽しさがあった。棚の上に設置された画面で見る方の映像は、どうしても途中で目線が棚の中に移ってしまったので諦めて棚を見ることにした。往路では先客がいて確認できなかったコーナーが科学や歴史、民俗学の読み物がまとまっていて、しまった、と思う。今の僕の怪談モードは、こういう古本と相性が良すぎる。はたして柳田國男やラフカディオ・ハーン、網野善彦の文庫をあっというまに六冊ほど引き抜き、あとは目についた宮田登『妖怪の民俗学』、岩田慶治『カミの人類学』、種村季弘編の『日本怪談集』の上巻、小松和彦『日本妖怪異聞録』をお迎えする。同じコーナーで清水廣一郎『中世イタリア商人の世界』も面白そうだったので取る。なにより秀村欣二『ネロ』だ!ネロ本だ。帯に「名君か暴君か。評価定まらぬ背徳者を追い、伝説の謎に挑む」とある。同担だ。買う。モードが怪しい方向に入っているせいでスパゲッティの棚でもいろいろ見つけてしまう。小林和彦と栗本慎一郎『経済の誕生』、ハーバード・D・ポンティング『英国人写真家の見た明治日本』、鈴木博之『東京の「地霊」』。『京都岩倉実相院日記』という幕末京都の貴族の日記を読み解く本が面白そう。あとはエレベーター上がってすぐのところにあったジャン-ミシェル・サルマン『魔女狩り』を掴んでレジへ。たくさん買っていただいて、と声をかけてもらって、弱々しく、途中から途方に暮れかけました、と応える。

風に煽られて日傘の骨が一本折れる。

新宿に移動して、珈琲貴族エジンバラから円盤に乗る場のアーカイブ会議に参加。Notion の営業をして、満足して途中退出。

シネマート新宿で『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』4Kリマスター版。本当に素晴らしかった。画質の粗さに気を取られることなく鑑賞すると、あらためて各ショットの格好よさや要素の配置の緻密さに気がつくことができる。こんなに硬質で冷徹な映画だったとは! と驚く。音響も笑っちゃうくらい大袈裟でイカしてた。映画館のための映画だった。欲を言えば字幕で「ゾンビ」ってつけないで欲しかったな。いまの感性からするとわかりやすいんだけど、言ってないのが大事なところなので。

汗びっちゃりだったのと、テンション上がってたのとでさっそくTシャツを二枚買う。このTシャツ代の方が二〇冊弱の古本より高いと思うと複雑だ。

渋谷のトイレで買いたてのTシャツに着替える。カールヴァーンで南森町さんのDiscordオフ会。上京している南森町さんに会いに奥さんも合流。いい香りのご飯をたらふく食べる。二時間ほどでさくっと解散するのが気持ちいい。解散後、奥さんと最寄駅で軽く一杯やってから帰っても余裕がある。あったはずなのだが、過活動気味な一日の日記を買いているうちに日付は超えてしまいそう。シャワー浴びなきゃ。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。