2022.09.19

ふだんテレビの部屋は奥さんのデスクになっているので、在宅勤務生活が始まってからテレビを見なくなった。今日は久しぶりに僕だけ労働日で、テレビの部屋で仕事していたので合間や作業のお供にテレビを使える。いつかの午後のロードショーで録画しておいた『学校の怪談』を観て、元同居人がNetflix のアカウント情報を残しておいてくれたPS4 で『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』のテレビシリーズの後半を観てべちょべちょに泣いたりした。とにかく毎話のように泣けと迫ってくるカツ丼、カツカレー、ソースカツ丼、みたいな構成のアニメシリーズで、京アニのなかでは僕はやはりさっぱりとしつつ重心のしっかり落とされた『小林さんちのメイドラゴン』が一番好きだな、と思う。でも本作も絵がすごく綺麗で、風景にまで演技を振り付けられるアニメーションの悦びが満ち満ちていて、カロリーは高いのだけれどぜんぶ惚れ惚れする。残りはOVA に劇場版が二本、次にテレビの前に座れるのはまた半年後とかだろうか。

『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』はいい作品なのだけれど泣ける。でも泣けるからいい作品なわけではないし、泣ける部分はどちらかといえば問題もなくはない。さらに言えば泣くだけであれば駄作の方が泣ける。下品な煽りにこちらも安心し切って無粋な涙をだぶだぶ流せる。作品というのは優れたものであるほどに、圧倒的な他者として目の前に現れるのだから、うかつに泣いて気持ちよくなったりすることを許せなかったりする。

台風は明日の明け方から夜にかけて日本海側を通過していく予報で、それであれば山もあるし、もしかしたらこちら側はそこまで降ったり吹いたりしないかもしれない。今日はカーッと晴れたり、びゃーっと降ったり忙しなく、気圧もそれに併せて乱高下するので、ボタン式でなくフェーダーで電圧を調整するタイプの拷問みたいだった。

今週の『正反対な君と僕』も非常によい。きしょい「初めて」信仰が蔓延る少年漫画のフィールドでこれをやってくれるのすごい嬉しい。それぞれに歴史や文脈や思想を持った個人と個人の関係は、所有とか契約みたいなものではないから、というのをはっきりとやってくれるのはすごく安心感がある。というか今の今になって気がついたのだが、これまで『正反対「の」』って書いてた。最悪。『正反対「な」』だった。「な」を囲むハートを「の」と読んでた。「の」じゃない。ななな。覚えた。もう過ちは繰り返さない。

カレー食べて、お風呂入って、ピノ食べて、炭酸水飲んで寝る。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。