2022.10.06

ああ、これもう入ってんのかな。えーっと、今日は目を酷使してしまったので、日記を書くために液晶を見るのがとても辛い。そのため、夕食後、小豆の温めるやつを目に載せながら、音声入力でこの日記を今書こうとしているというわけです。

今日は『最遊記』と『怪獣8号』を読み、U-NEXTで『エックス』と『カモンカモン』を観る一日であった。とにかくずっと目を使っていて、目の奥がツンとしている。何と言うのだろう、あの目の奥の、目と脳とをつないでいる所の、あの、あの、なんていうの、あのほらあの視神経。視神経の束が凝り固まってカチコチになって動かない感じがあるので、小豆の温めるやつを載せていると。少しそれがほぐれていくよって、のっけながら、眼球を上下左右に動かしながら、こわばりをほぐしている最中に、こうして音声入力を試しているわけですが、もういい加減知っているのですが、こういう書き方をすると、どうせ後でほとんど直すことになります。毎回思うのは「かぎかっこ」というこの入力がきちんとうまくいっているのか確信が持てないところで、今回はタイトルがたくさんあるので難しい。

『怪獣8号』はなんだか徹頭徹尾最初から最後までどこかで見たことがある展開、どこかで見たことのある設定、どこかで見たことのある台詞がふんだんに満ちていて、それらの過去の面白いものたちをきれいに構成し直し読みやすくまとめる。その手腕はすごいなぁと思うの。だけれども、だからそこには目新しいものないしは今すぐには理解できないものは、特にそこにはなく、読んでる間のなんじゃこりゃみたいな興奮は『ダンダダン』や『チェンソーマン』などの作品の方が強くあると感じる。先行する作品群へのリスペクトや真摯な研究の結果のできあがる、トリビュートアルバムのような作品。そういう意味だと、今日見た『エックス』も同じような作品で、かぎかっこ、あれは何だっけ?死霊のはらわたじゃなくてあれ『死霊のえじき』。テキサスチェーンソー。あと、いや、これタイトル出てこないと大変だなぁ。えっと『13日の金曜日』や『シャイニング』など、往年の名作へのオマージュと言うよりも、ほぼそのままの演出やカメラを借用しながら、一本の作品として纏め上げているのだが、ここにもまた新しいものに既知を見いだす喜びこそあれ、全く未知の何かに出くわす興奮はあまりない。まぁ別に新しい『テキサスチェーンソー』が観れたという意味で、こちらとしては満足と言えば満足なのだけれども。

PTAの『ブギーナイツ』と同じような時代を舞台に、ポルノ映画とホラー映画に対する屈託のないリスペクトを表明するような映画は確かに楽しいのだが、素朴すぎるエイジズムの扱いなど、オリジナル要素として持ってきたものがあまりにも陳腐で弱いのではないかという気がどうしてもしてしまうのがちょっと残念。スプラッターの描写は意外と控えめで良心的な80年代的でありつつも、年寄りの描き方だけはいくらでもグロテスクにできてしまうという。そのバランス感覚に少しこちらは戸惑ってしまう。

『カモンカモン』は非常に良い映画だった。マイク・ミルズはやっぱり最高やんな、と思うけれども、今日見た『エックス』も『カモンカモン』もどちらも配給はA24で、A24はホラーだけではないのだなぁと思いました。音声入力で喋っていると、自分がどのぐらいの分量をかけているか、もしくはどのぐらいの分量もう一度手で直さなければいけないのかがわからない。どころか、そもそも音声入力が無事今も進行中であるかどうかすら怪しい。そういうことを考えていくと、だんだんと不安になってくる小豆の温めて目の上に載っけるやつもだいぶ温くなってきたので、一旦このくらいにしようと思う。これは、えーと、音声入力の最後、終了するときはどうやって終了しますと言えばいいのかわからないのだが、どうすればいいんでしょう。もういいです。Hey Siri音声入力を止めて。止まってるかな。え?

(iPhoneのボタンを二回押して音声入力を止める。ここまでの文章を最低限整えて、案外うまくいってることに感心する。しかしこうして見ると口頭だと頭の悪さがよく出る。重複表現が多すぎる。書きそびれたというか、言いそびれたけれども、あらゆる新作が旧作の再発見やアレンジになってしまう現在、いちばん新鮮な気持ちで読めるのは二十年以上前の作品である『最遊記』かもしれない。沙悟浄とかいまのSNSでは生きていけなかったり、キャラクター先行で物語が駆動していて「考察」の余地がなかったり、自閉して自走している作品の強度を感じる。)

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。