2021.01.04(1-p.365)

日付が変わってもしばらく『チェンソーマン』の新刊がKindle に配布されないのでじれた。しばらくすると来たので寝る前に読んでめちゃくちゃな気持ちになってしまった。

 

起きて、きょうはヒロアカの新刊を買いに行くのが楽しみだ。紙と電子の使い分けはあるようでない。

ニーナ・シモンのドキュメンタリーで、自由とはなんですかという質問への答えが「恐怖がないことだ」だったことを最近よく思い出す。行政だけが国ではないし、そもそも国とか割とどうでもいいのだけれど、こうも行政が不安や不信を煽り立て恐怖を増幅させるようなことばかりだと、あまりに息苦しい国だなと思えてしまう。しかし、緊急事態宣言というのはなんなのだろう。緊急事態ですよと宣言されても、そうだね、以外に返す言葉がない。どうして欲しいのか、要求を飲んだ場合どんな見返りが期待できるのか、それがわからなければ動きようがない。『ゲンロン戦記』のよかったところに、東浩紀のような人が商売人の倫理を語るというのがあって、それは露悪的な利己でもなければ、生活感のない利他でもなく、そのあいだでいい塩梅を探る三方良しの精神だ。すべての要求を通すことは無理だし、だからと言ってすべての要求を受け入れていてはもたない。大事なのは、お互いに上手に負けつつ、おいしい思いをしようと調整することであって、党派的な原理主義に基づいて殲滅戦に持ち込むことではない。政治がすでに経済の論理でしか動かないというのなら、ますます商売人の風上にもおけない今のあり方を改めるべきだ。

日中は友達から借りた『ゴールデンカムイ』の新刊を読んで何なんだこれはと思い、『サラムボー』も終わってしまって楽しかったなと思う。

退勤後は奥さんと駅前まで歩き、電球とヒロアカを買う。手をつないで歩きながら、さいきんはなんだか二人のおしゃべりが弾まないと奥さんから提議があった。なんでだろう。こういうとき録音はひとつの助けになるというか、架空の第三者を置くことで話題に広がりが出るところはあるけれど、もしかしたらむしろ、この話題については録音の時にしゃべろう、と思ってふだんの会話でネタを出し惜しみしている部分があるのではないかと考えるとなくはない気もしてくる。

ヒロアカを読んでめちゃくちゃな気持ちになってしまった。二人は一瞬ジャンプのバックナンバーの購入を検討したが、結局はやめにした。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。