2022.11.19

きのう録音しているときだったか、いま僕は心がつらい、体調は悪くないというか何の感覚もなくて体が透明みたいで、だからつらい心だけが際立っている、というような話をしたら、いやいやそりゃ体調が悪いことすらわかんないくらい体調が悪いんだよ、鍼行きな、と奥さんに言われた。そんなわけないじゃん、体は透明だって言ってんの、と思いながらも素直に従うのが僕のいいところ。午前中は検診がある奥さんと同じタイミングで外に出て、行きつけの鍼灸治療院へ。予約しないでふらっと行けるのがいい治療院で、先客がいるのであと三十分くらい後に来てね、と言われる。そのへんのヘアーサロンにふらっと入って前髪を切ってもらう。商店街内のヘアーサロンに初めて入ったけれど、向こうからしても珍しいのだろう。あれこれとおしゃべりして、おすすめの整体を教えてもらったり、会計時にクッキーをいただいたりちやほやしてもらう。まだすこし時間に余裕があったので公園で本を読んでいた。ぽかぽかして気持ちがいい。外で読むのはいいな。

それから鍼灸を受ける。すごかった。背中の左側が凝りに凝っていて、触られるだけでギュンッギュンに血行が促進されていくのがわかるし、打たれる鍼がいちいちズッ……ドォォォォンと響くので、あぁ、おぅ、うぅ、と声が漏れる。終えてもまだ腰のあたりに響きが残っていて、歩くたびにズンズンするのでよちよち歩きで駅に向かった。千駄木で奥さんと合流してからも、ふぅ、ふぅ、と息を吐きながらゆっくり歩く。なかなか着かないねえ、と話していたら逆方向だった。千駄木のあたりはいつも方向感覚がおかしくなる。右も左も雰囲気が似ているから、どっちがどっちかわからないのだ。引き返して、またふぅ、ふぅ、と歩いていたら、「ふぅ、ふぅ」って言いながら歩くの絵本でしか見たことないよ、と奥さんが面白がっているが、だってじっさいここにいるじゃないか!

目当てのとんかつ屋さんに着いて、並ばずに入ることができた。ロース定食に卵フライもつけちゃう。かつは分厚くて、二人とも満足した。腹ごなしに遠まわり気味に歩いて、狐月庵に。お茶を淹れているあいだに鍼灸の反動がいよいよきていて、うとうとしてしまう。眠さをがまんするためなのか、目が据わってる、と怖がられる。台湾茶は何度も何度も淹れてのんびりできるからいい。愛玉子ゼリーも美味しい。僕が半分寝てるから、ほとんどおしゃべりもせずに静かにお茶を楽しんでいた。帰りにブックオフに寄って、エーステのDVD を買う。配信では観られないバージョンらしく、掘り出し物だった。

家に帰ると三時間くらい熟睡。起きると生まれ変わったような気持ちだった。僕には体がある! 湯上がりのような倦怠感と、うっすらと全身が筋肉痛。これで明日立ち仕事はつらいかもな、とすこし心配になるくらい。できれば間を置かずにもう一回来てね、とのことだったので来週早々に受けに行きたい。復活のために、いちど不調を表に出さないといけない。カレーをもりもり食べる。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。