昼休憩の隙に三〇分マッサージを受けて、やはり体の疲労がものすごい。背中から腰、お尻にかけて凝りに凝っている。どこを押されても、おおう、と声が出そうだった。猫背を気にしていると腰に力が入ってしまって反り腰気味になる。天井から吊られているイメージで重心を高めに、みぞおちのあたりまで引き上げるイメージで、腰を意識してはいけない、そう言われる。あとは腸腰筋と内転筋を気長に鍛えよう、だそうだ。
日替わりランチ850円の支払いのため、小銭入れから10円玉を五枚、100円玉を三枚、もたもたと順番に出していき、札入れから千円札をのぞかせたタイミングで、あ五百円のお釣りですね、と合いの手を入れてくれた店員は、キャッシャーをしばらく覗き込んだあと、せっかくなのでピカピカのやつにしましょう、と今年発行の硬貨を渡してくれた。え、ありがとうございます、とにこにこ受け取って、べつになんということのない、どうでもいいやりとりが妙に嬉しい。どれであれ昨日は同じであるはずのもののなかから、わざわざピカピカのものを選んで渡してくれる、この特に実利のない嬉しさは、今日一日ほこほこした気分を持続させそうだった。自販機で水を買うときも、ピカピカの硬貨は避けておいた。明日には使ってしまうかもだけど、今日のところは大事にしたい。
賃労働の時間に、心配事がひとつ解消される感じがあって、ふっと気が楽になった。何がいいって僕がどうこうしようのないことが、僕が何をするでもなく解消したということだ。何もしないまま上手くいくのがいちばんいい。
退勤後はゴールデン街。月に吠えるで碇さんのZINEを買いたかった。開店まで余裕があったので我論で塩ラーメンを食べてから向かう。柚子の効かせ方が、名古屋の龍月を彷彿とさせて嬉しくなる。事前に教えていただいた通り、二〇時頃から満席になって、両隣のお客が碇さんの本をすでに買っていて大人気だった。在庫や原価設定の話をもっとしたい。右隣の方と映画や本の話で盛り上がり、近くに『ゾンビーバー』を愛する人が切り盛りする店があると教えてもらい、連れていってもらう。店内の液晶では『トレマーズ』がかかっていて、それだけで信頼できる。へらへら楽しく酔っ払って帰る。奢ってもらってしまって、ナタリー・サルトゥー=ラジュの負債論を思い出したりしていた。借りを作るというのは、関係を持続させる意志の表明だ。
