2022.12.17

昨晩はうまく寝付けなくて、いくつもの夢を見ては目が覚めてしまった。武装した小池百合子がマシンガンを乱射するホテルの最上階からなんとか脱出しようとするのとか、全裸で駅構内に放置されてどうにか帰宅を試みるのとか、うっすら『ダイ・ハード』の雰囲気が漂っているのはクリスマスが近いからだろうか。起床時間になってもどうにもなる気がせず、早々に諦めて会社に休みの報を入れて寝直した。昼まで寝て回復。

降って湧いたというよりも、転んで掴み取った休日。さてどうしようか。奥さんは別で出かける用事がある。ぼんやりとTwitterを開くと十七時退勤社のおふたりが小声書房の軒先で本を売っているのを知る。いつか行きたい本屋だったし、文フリに行けなかった無念を少しでも晴らしたいし、なによりおふたりに会いたくなったので、奥さんと一緒に家を出ることにした。往復で三時間かけて本屋にだけ行くというのは一人でしかできない酔狂でちょうどいい。

奥さんと途中まで一緒の電車。わかれてからは『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』を読んでいた。

北本駅について、西口のほうというのだけ確認しておいて、あとは地図の印象にまかせてふらふらと歩いているとあっさりお店をみつけた。笠井さんと橋本さんに、こんにちは、と声をかけると、あら、と驚いてくれた。橋本さんは文學界のエッセイを読んでくださったようで嬉しい。おふたりともいつお話ししても気遣いに満ちていて、くすぐったいような気持ちになる。小声書房の店内もじっくりと見る。入って右のアンソロジーコーナーの少なくない面積を怪談が占めていて、河出書房新社の世界怪談集のシリーズなど魅力的なものがたくさん。怪談はしかしキリがないのできょうはなるべく控えよう、とこらえる。こらえきれず春陽堂書店の『チベット幻想奇譚』は買うことに。まえがきを見るとブラヴァツキーはじめ多くの西洋の神秘主義社が神秘の源泉をチベットに求めたが、実際のチベット土着の怪談とはどんなものなのだろうか、というような問いが提起されていて、ぐっときたので。面陳されていた『鉄道小説』も、函入りの装丁がふるい児童書のようでかわいく、レジに。店主の橋爪さんに会計いただくさいに怪談の話などを楽しくおしゃべり。ZINE お取り扱いも関心を持ってくださって、ああ、そうか、せっかくなら本を持ってくればよかったな、といまさら気がつく。軒先にもどってお二人の新刊を買って、また長々とおしゃべり。立石にオープンしたPOTATO CHIP BOOKSを教えていただく。こんど行ってみよう。きょうの軒先は寒そうだった。なにかあったかいものを買って来ればよかったな、とあとから気がつく。ずっとお話ししてたいな、と名残惜しく思いつつ退散。教えてもらった斜向かいのお店でたい焼きとカフェラテを買って駅までの道を食べながら歩く。

どれから読もうかな、とほくほくして電車に乗って、けっきょく進化論の続きを読んでいた。

奥さんがレトルトカレーを買ってきてくれたので、夕食はその食べ比べ。副菜にクミンで炒めたセロリにレモン汁を和えたやつ、蒸し野菜をてきとうに用意して、ディップ用にスパイス味噌をつくってみたらとてもおいしかった。ごま油と醤油でのばした味噌にカレー用にブレンドしてあるスパイスとにんにくを練り込んだもの。スパイスは味の組み立てが楽しくて好き。味噌に山椒とか練り込んでもよさそう、と奥さんと話す。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。