2023.01.29

後ろ手に縛られて椅子に座らされて、上唇と下唇の両端を釣り針で引っ張られるせいで無理やり開いた口の中に甲虫の素揚げをもりもり突っ込まれる夢を見て起きる。香ばしいっちゃ香ばしいのだけれど、ゴキジェットみたいな味がしたからそのへんで採ってきたやつなんだと思う。農薬より体に悪そう。

奥さんの具合が悪そうだから今日は一日静かに過ごすか、と思っていたら意外と元気で、よく晴れていたので散歩に出かけた。焼肉ランチ。いま昨年の日記を読み返していて、とにかくこの二人はよく肉を食いいに出かけている。甘いものを買って帰るつもりが牛角のデザートで満足したので買わず、ハンドクリームを探しにデパートに行ってみるもどうもちょうどいい大きさのものがない。

坂本浩也「プルースト受容の現在 ―大衆化と学術性のあいだで―」という論文の中で、「一般読者」の事例として『プルーストを読む生活』が取り上げられているのを発見する。おれは大衆化の権化、と愉快な気持ち。

けっきょくそのまま図書館を経由して帰宅して、日記の校正を集中して進める。家に帰ってからはほとんどずっと日記の校正を進めていたから、もう自分の日記は勘弁してほしい。日記を読むだけでお腹がいっぱいだからもう書きたくない。書いたらまた読むものが増えてしまう。そんな気持ちでいる。こいつ、毎日毎日うるさいねん。

どうも昨日から感情が凪いでいて、なにをしていても楽しくないし、元気もないし、笑顔も失われた。弱った奥さんを猫可愛がりしたいのに、けろっとしている奥さんの様子に調子が狂い、そもそも無気力なので奥さんに甲斐甲斐しくするために働かす頭や体というものがビクとも動作しないままぐずぐずになっている。どうしたらいいのかわからない、途方に暮れたまま日曜日が終わっていく。困ったり悲しかったりという感情すら湧いてこない。もう寝るしかない。ポンコツアンドロイドになってしまった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。