制作は楽しいけど、過程の時間の比率でいうと楽しい時間はそんなにない。七割くらいは理想通り進行できないことへの幻滅や自己嫌悪、抽象的な不安、具体的な面倒に占められているのだが、残りの三割の楽しさが麻薬的で、なにより七割の困難を乗り越えたあとにつかのま感じる喜びが忘れがたく、何度も苦しい思いに身を投じる。
このとき、七割の苦しさを覚えていて、覚悟のうえで飛び込んでいるならともかく、僕の場合は毎回記憶しているのは楽しいことだけなので、うきうき取りかかっては新鮮に「え、楽しくない……!?」と戸惑い、形ができあがってくるとまたケロリと忘れて楽しさだけになる。
投入した労力が目に見える効果として即座に現れるわけではないということを納得するためだけにでも、自分でなにか作ってみるという体験はしておいたほうがいい。
余裕がないときに制作するとよけいに余裕はなくなるのだが、なぜだかそれで保たれる健康というものがある。