2023.03.17

『ハイパーインフレーション』、とっても面白かった!

暖かくなってきたあたりから、新しいZINEの準備だったり、人と会う約束だったりで忙しく動いていて、実感としては元気ではあるんだけど、どこかで揺り戻しがあるんじゃないかと不安でもある。特にきょうみたいに寒さが戻ってくると、反動が予感される。すでにすこしめそめそした気持ち。冬の終わりごろから萎びていく一方のパキラのよう。僕はサボテンも枯らして陥没した頭蓋骨みたいにしてしまうから、パキラも死なせてしまうのかもしれない。

なんだかんだで、ズルしてサボると気分がよくない。しかもその気分のよくなさを何カ月も引きずってしまうから、けっきょく長く気分よくやっていくにはズルしないでいることがいちばんなのだが、ここで意識しておいたほうがいいのは、ズルい仕組みに絡み取られそうなとき、その手からのらくらといい加減に逃れていくことはズルではないという考えをしっかり持っておくことだ。堂々とサボれないときはサボるべきではない。しかし確固たるなにかがあるのであればしっかりサボるべきだ。とにかくこういうのは中途半端がいちばんよくない。

ノートにこれからの労働計画をてきとうに書き出し、やはりもう今月はほとんどなにもしなくていいなと納得し、次にもうすこし綿密に『会社員の哲学』の執筆計画を立てた。四月中に仕上げるとなると、ひとまずざっと最後まで書き上げるというのを今月中にやってしまったほうがいいと知れた。いちにちに一章くらいのペースで仕上げていけば無理なスケジュールではない。むしろまだ余裕がある。よし。しっかりと油断することができた。昼休みは隣駅まで歩いて、台湾ラーメンの店を見つけたが胃腸の調子を考えてよして、別の中華のよだれどり定食にした。くたくたのもやしに唐辛子がよく絡んでいてうまい。そういうわけでお腹の調子がよくない。

帰ってもめそつきが治らないので久しぶりに奥さんに足を揉んでもらう。ひやああ、ひやああ、と情けない悲鳴をあげる。お風呂にもゆっくり入って、いい人間になった。にっこりと奥さんに微笑みかけて、今日もいい一日にしようね、と思う。もう23時半だった。この世のすべて、とくに単線的な時間が憎い。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。