2023.04.22

昨日は明らかに飲み過ぎた。体がぼんやりとだるい。しかし吐くまで飲んでしまったり、翌日ガンガンと頭が痛い、ということはなくなっているからすこしは賢くなったのかも知れない。昨日は0次会でビール中瓶一本、みんなと合流して泡盛をロックで二杯、二軒目で日本酒を徳利で一本か二本、ひとりで三軒目に行ってウイスキーをロックで。このくらいが僕の限度をすこし超える量らしい。どうやって帰ってこれたのだろう。乗り換えアプリで見るともう終電はなかったはずなのに最寄駅に着いていた。歩ける気がしなかったからTwitterのスペースを開けてゾンビのように唸っていたら宮崎さんがいらして、人が相手だとわりあいしゃきしゃき喋ったのではないか。あんまり覚えてない。

『会社員の哲学』が届く。500冊。7箱。『差異と重複』が10冊しか入らない段ボールに80冊入る。発送作業としては件数も手数も今回の方が大きいはずなのだが、物理的な小ささになんだかのんびりしてしまう。クリックポストを30件強印刷する。つまりそれだけの荷物を作らなくてはいけない。今回はクリックポスト用の箱と、梱包用のラップを用意しておいたから、やることにおいて考えるコストはだいぶ減っている。黙々と手を動かすだけ。僕はぼへぼへしていて主に奥さんが、なのだけれど。本を作るだけ作って発送作業になると途方に暮れてしまう僕をフォローしていると、映画に出てくるうだつの上がらない発明家を支える妻みたいだなと思う、いつだか奥さんはそう話してくれて、それ以来本が届くたびに僕の自己イメージは『ミクロキッズ』のリック・モラニスになる。

奥さんはお昼を食べ損ね、僕はお酒で質の悪かったのもあって睡眠不足で、だんだんと二人とも感じが悪くなる。いちど距離をとろうとお昼寝を試みるも、あと一歩のところで険悪に。でもすぐに奥さんはご飯、僕はお布団へと分かれることができて賢明だった。お互いにいい人間であることを取り戻して作業再開。クリックポストとはいえ、あまりに多くてポストが溢れたら困るので週明けに窓口に持っていくことに。厚みがアウトで返されてもすぐに対応できるしね。

開店準備で今日もいるとのことなので、本をキャリーに積んで水道橋の機械書房へ。三階までエレベーターはないからキャリーごと担ぐ。『差異と重複』と比べてしまえばへっちゃらだった。岸波さんは『会社員の哲学』を100冊仕入れてくださる。なるべく書店に利益を回そうと卸値を調整したのをちゃんと見てくださっての粋な計らい。その心意気に応えたくて、今回の本は真っ先にここに持っていくと決めていた。その場で50冊にサインを書いて、初めの一冊は25秒かかってこれは一時間かかるなと思ったけれどすぐにリズムを掴んで30分もかからなかったのではないか。そのあと小一時間くらいおしゃべり。岸波さんの話は今日もおもしろーい! とはしゃいでいるうちに自分も動き出したくてうずうずしてくるようだった。仕入れの話や、オンラインとの距離感、本屋の話として聞くと異端だが、小売の話として聞くとあまりにまっとうな考えで、作家でもあり、異業種からの参入でもある岸波さんならではの発想であるな、と感心しきり。開店してそうした予測がどの程度あたり、どの程度かわっていくのか、いまから楽しみ。そしてこのお店のスタートに本で立ち会えるのがすごくうれしい。気がついたら二日酔いのだるさもすっかり回復していた。お腹もぺこぺこだ。

奥さんと合流しておいしい日本酒のお店に。今日は控えめにするぞ、と自制するつもりだ。つもりというのは、まだ合流前にこの日記を書いているからで、それはつまり今日も酔っ払ってしまったとしても日記はあるぞという自分への目配せでもあり、はたしてほんとうに自制するのだろうか。たぶんするだろう。今日は梱包を済ませてくれた奥さんを労うのだから酔っ払うのは奥さんのほうであるべきだからだ。僕は安心して家まで帰れるように冷静な頭とコントロールされた体を保つほかないだろう。

初めて行くお店だったけど大変美味しくて出汁が際立つ薄味が日本酒を呼び込むよう。器もみんな綺麗でかわいい。酢の物の盛り合わせの内容はたこ、わかめ、とりがい、もずく、あん肝。おでんは海老しんじょ、鶏つくね、がんもどき、とくに餅きんちゃくが絶品。大ぶりのしゅうまい、ねぎとろ、さつま揚げ。僕はお腹が空いていたので焼きおにぎりも頼む。僕は山葡萄サワーをちびちびやりながら、日本酒もちょっぴり。二人ともきげんよく沢山食べる。ほどよく酔って、満腹。僕も奥さんもべろべろではないので、大人だった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。