2023.04.24

出勤前に『会社員の哲学』の発送をしたかった。久しぶりに早起きをして、九時のオープンに駆け込む。予想外に朝のほうが窓口は混んでいて、年寄りばかりだった。朝起きるのが早いとお店が開くのがイベントのようになる。まだ起き出していない町で、そわそわと動き出すのを心待ちにする。早起きは楽しみを増やすのかもな、とふだんまったく起きられない僕は考える。クリックポストが30件強、レターパックプラス1件、ゆうパック4件。家に戻ると奥さんが次の便の準備をしておいてくれる。すごい勢いで三往復して、厚みがアウトで返されたものを奥さんがすぐに直してくれるからもう一回。もうひとつ入った注文のクリックポストの印字をコンビニで済ませて帰って、各店に発送のメールを送る。落ち着いたところで在宅で労働を開始する。午後は会議が続くから事務所にいなくてはならない。出社のさいにクリックポストを投函する。SPBS TORANOMON のぶんは厚みを直すよりも行きがけに納品しちゃえばいいやと持っていく。終えて会社に向かう途中、二度自動ドアにぶつかって、一度iPhone を落とした。疲れている。もう眠い。午前中からすごい活動量だ。ふだんであれば一時間くらいしか動けないのに、きょうはもう6627歩も歩いてる。デパ地下でケーキを取り置きしてもらう。

へろへろと労働。麦味参を投入。漢方の「ばくみさん」はいつも「むぎあじさんじょう」で変換して「上」を消している。明日も早起きなのか。出来る気がしない。でも今晩は早く入眠しそうな気もする。さっきぶつけたところ、あざになりそうだな。

日が随分と長くなった。え、まだ明るいんだ、と思っているといつの間にか暗いので事務所を出る。おっきいイスパハンを受け取って帰る。ケーキを持って電車に乗るのは緊張するのだけど今日はずっと座れたから安心だった。夕食は大ぶりの牡蠣で、食後に食べた薔薇とライチとラズベリーの組み合わせはやっぱりとびきり美味しかった。きのうは、もうケーキはなんでもいいや、と話していた奥さんの頬が緩んだ横顔を眺めながら、よかったね、おめでとう、そう思う。口にしていたかも知れないし、顔には出ていただろう。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。