酔っ払った日も基本はその晩に書いてしまうし、きのうもそうしたのだが、酔っているときのことは翌日の方がよく思い出せるようだ。えんらいのおいしい料理。かぶの浅漬けの酸っぱさににこにこしたこと。白味噌やゆず酢で和えられた頭足類をぐにぐに噛みしめたこと。ポテトサラダの味が濃くてうれしかったこと。唐揚げもぷりぷりだったこと。Ryotaさんのレモンサワーが蒸散の速度で減っていく。ビールやお燗をすいすいと飲み、にこにこと愉快そうに手を叩いては「大声出さない 手を叩かない」という張り紙をみてハッとする武塙さん。宮益坂を下りながらも話し続けて、改札をくぐったところで軽やかに解散になった。
たぶん、思い出して書くということに関しては朝まで待ったほうが適しているのだと思う。日記に求めるものをなるべく鮮明に思い返す目や、それを清冽な文字列で描き直す手は、渦中に身を置きながら書くことと比べ対象との距離が肝腎になる。僕は日記はライブだから、うまく見通せないままその場その場に対処するようにして書いていくほうが好きで、これは対象がなんであるかもわからないまま書けるかどうかが重要である。川を眺めて描写するか、飛び込んで泳ぐかのちがいというか。関西の日記はぜんぶ朝に書いたから、すでに何かを懐かしがっている。旅行というのはそういうものなのだが。
つくりおきの肉じゃがを奥さんが昨晩シチューにリメイクしていて、朝ご飯にいただいた。お酒がやや残っていたので、浴槽にお湯を張って汗を流す。
歩いて町に出る。向こうの方にぐっしょりと重たそうな黒い雲が浮かんでいるけれどいまは明るい。三度目の脱毛。ようやく折り返し。待合室ではチェヴェングールでの虐殺が思い起こされていた。照射中猛烈に眠たくなって外に出ると雨だった。パウダールームで塗った日焼け止めの匂いがあまり好きではなくてつい嗅いでしまう。火傷したみたいな臭いだ。おそめのお昼にラーメンを食べて、カラオケに行くことに。2023年の冬単の曲がジョイサウンドに入ったというので、奥さんと行く前に「怪人Fと嘆きのオペラ」を練習したかった。ほかの曲もどんどん歌う。「いつか笑えるように」を歌っていると、ガイがザフラに連れて行かれてからのエピソードあたりで堪えきれなくなってぐちょぐちょに泣いてしまう。紬として泣いて、密として泣いて、ガイとして泣きながら声の震えを大きな声で押さえつけながらなんとか最後まで歌って、ああ、いい芝居だったなあと思う。自分のことをアンドロイドだと思い込んでいる男というトンチキ設定から、傷と気遣いの物語としてあれほど美しいシーンへと到達してしまうのだからすごい。一時間でしっかり泣き疲れて帰宅。
『チェヴェングール』を読んでいたら寝ていた。起き出して夕食をつくる。きのう立ち読みしたウー・ウェンのうろ覚えレシピをもとに回鍋肉。レシピ通りに作ってほしいと書いてあったのだが、いちばん大事なところを無視している。回鍋とは複数の鍋を行き来させるという意味らしい。キャベツをさっと熱湯にくぐらせ、おなじお湯で豚肉をしっかりめに茹でる。それから肉を炒めてしっかりめに味をつけて、キャベツはかるくからめる程度。甜麺醤がなかったので豆板醤とごま油で代用したからずいぶん別物ではある。電子レンジでのごはんの解凍もコツをつかんできたので安心。つくりおきの浅漬けと、玉ねぎとほうれん草の味噌汁。
食後は春単の千秋楽の映像を見る。パソコンの画面で、スピーカーだけpopInをつかう。音響が豪勢なだけでずいぶん感じが出る。画面は画角が途中で変わったりかなり不安定だったけど、劇場でも二回観ているし、だいたいのことは補えてしまう。千景がすっかりみんなのこと大好きで嬉しいよ。
