2023.06.25

二日酔い気味で三度寝くらいする。ものすごく家を出るのが億劫。

ずるずると自分の身を引きずるようにして円盤に乗る場のお祭りに行く。行けば楽しいので行ってよかった。辻村さんのほぐしばいはヘンテコで面白かった。テキストを書いたと言っても、つじこさんがいろんな人から聞いてきた話を僕に教えてくれて、又聞きのような形のそれを僕が過剰に誇張した実話怪談本の文体で起こすというつくりで、ネタも文体も借り物だからまったく自分のものという感じがしなくて、それでも、ああ、そんなの書いたなあとは覚えているという不思議な距離感である。実話怪談の要請する語りの型というものがあるが、今回採用されていた演劇の発話はそれらとはぜんぜん異なるもので、怪談的に収まりのいい間の取り方や抜き方がひとつも使われない。だからたしかに朗読されているのは野暮ったい怪談風のそれであるのだが、表出しているものの手触りはどこにも着地せずにいる。やはり手癖であっここは僕臭いなというか、僕の喋りのリズムで書いているところがいくつもあって、それがまったく別様に発話されるからその時だけ違和がはっきりとあった。同時上演の作品は俳優たちが自分たちで設営をしていくのだけど、だんだんと空っぽの空間を散らかしていって劇空間に塗り替えるところが面白かった。本編はけっこう野蛮だった。

それから運営スタッフ側にまわり案内のお手伝いなどのんびりお仕事。案内しつつ演目も観ることができた。チェーホフの小説の朗読があり、紙芝居があり、二人で雑談をするのだが片方がメインで喋ってタイマーが鳴ると役を交換して今度は先の内容を聞き役だった人が語り直すという作品があった。さらには登壇する俳優が自分の話を一旦テキストに落とし込まれたものを再度みずから演技で立ち上げ直すというものまであった。これらのパフォーマンスの対比からでも実話怪談を語れそうだ。なにを観ても怪談づく。休憩時間のあいだは同じく手伝いで来ていた方とアトリエの軒先でおしゃべりしていて、お互いの怪談話を披露しあったりと楽しく過ごす。

最後のブロックの終演が21時半過ぎで、撤収してそのまま会場で打ち上げ。小一時間だけ参加して退散。あすは外で労働の日。もうくたびれちゃった。僕が日記を書いているあいだ、奥さんは僕の足の爪の養生をしてくれるらしい。向かいの椅子の上に足を置いてされるがままになる。体勢からして腰が辛く、テーブルで足元が見えないので奥さんの作業内容も判然としない。真剣な横顔に、こういうことを言い出せないまま日記だけが書かれていった。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。