2023.06.24

午前中は機械書房で『会社員の哲学』の読書会があった。僕は行っていない。めいっぱいまで布団の中でぬくぬくしていた。楽しいものになっていたらいいなと思う。自分のいないところで自分の本の話がなされるというのは妙な感覚だ。本そのものよりも鮮烈な議論がなされていたら嬉しい。

僕は午後から『チェヴェングール』の読書会。渋谷のカフェ・ミヤマが会場で、『2666』と同じ会場なので嬉しい気持ち。すこし早めに出て、味の店錦の支那麺と餃子。そのあと会場へ向かう階段を降りていく。このあたりもずいぶんと完成品が増えたというか、三年前とは景色がちがっているはずだった。渋谷は人がものすごく多い。観光地なのだ。

読書会は非常に楽しく、四時間たっぷり話がなされた。定式化してください。複雑化のために棄権します。教えてくださいな!この場でしか通用しないようなリファレンスの応酬。散漫さをもつ長編ならではのシーンの多種多様さへの言及。脱線もしつつずっと本の話が飛び交う嬉しい時間だった。インターネット越しに知っている人たちと生身であえて、これがオフ会か、という感慨を覚える。僕はこういうとき参加者の皆さんのことを日記に積極的に書かない。僕が個人的に約束して会った人や、相手も日記などを公開している場合は書いたりもするようになったが、基本的に僕は人のことを好き勝手に描写することを好まない。誰かのことを書くというのは、ある種の無遠慮が要請される。きょうのような多人数でお互いに気遣いのある距離感でのやりとりのさいは、名前を出すことさえも控えがちというか、これはあれだろうか、オフ会のお作法だとでも思っているのだろうか。

打ち上げは刺身の美味しい居酒屋。ビール、ハイボールからの日本酒。にこにこ飲み食いする。二次会は山家。ものすごく久しぶりに来た。カフェの談話室も飲み屋の椅子も固くて、お尻が痛くなる。僕はあまり小説を読まないからこういう機会を捉えて読んでいくのはいいかもしれない。僕よりも読んでいる人たちに囲まれていて嬉しかった。

電車を降りると草いきれ。夏なんだな。ニュースによればきょう囲んでいた小説の舞台となった土地で大変なことが起こっている。

酔っ払って歩いていると気がついたら歌って踊ってる。僕はいつか酔った帰り道に交通事故で死ぬんだろうなと考えてしまうほどの注意散漫っぷりに自分で不安になるころ、目の前を大きなトラックがアクセルを踏み込んで突っ切っていった。コンビニでアイスを買って、奥さんと食べる。僕はずいぶんごきげんで、えへへ、とニヤニヤし続けていたのだと思う。なんとかシャワーを浴びて、日記を書こうとキーボードに手を置いたまま眠ってしまい、諦めてちゃんと寝た。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。