2023.07.31

残しておくという意識で日記を書いたことがあったろうかと思う。覚えておきたいことは写真に撮っておこうと考えるようになったが、これもまたカメラを忘れたり持っていても出しそびれたりしてしまいがちで、象の旅で加茂さんと夏目さんと写真を撮ればよかったなと今さら思い当たったりしている。関西ではよく撮ったから、関東圏はふだんの場所という意識で、ふだんの場所はことさら残す必要がないということなのかもしれない。僕はなんでもない毎日のささいなディティールを丁寧に描写して慈しむような態度とも無縁だし、とにかくがさつで忘れっぽい。書くときは何かを拾う意識よりも落っことしていく感覚のほうがつよい。きのうから試した水風呂がとてもいい感じだというのは書いただろうか。きのう何を書いたのかさえ覚えていられない。今晩も水風呂に入った。のぼせないからいつまででも浸かっていられるのが難点といえば難点だろう。

『文學界』はAmazon がいちばん早く書影も目次も出て、公式からの告知はずいぶん後だからどのタイミングで告知をするか迷う。迷っているあいだに何人かがすでに出していて、これだけの面々が出しているのだからもういいかと思いがちであるが、たぶんちゃんとアピールしたほうがいい。ここまでくると気を逸した感があるので公式を待つつもりだ。今日ついにスマホのアイコンも黒地にばつ印になってしまい、Twitter との心理的距離がいっそう遠ざかった。ほかのSNS もばからしく、iPhone はほとんどFGO 専用機になってきた。あ、FGO の二次創作や攻略情報を見るのにはまだバツも使っている。その合間に告知をすればいいのだが、微妙に遠回しな考えの断片だけ垂れ流して満足してしまう。こんな投稿を見かけた。

日本の現代演劇を見てると頻繁に「大人になりきれない僕たち」みたいなテーマやキャラクターが出てくる。それは日本において演劇というジャンルがまだ子供だという自意識とも重なっているのかもしれない。ただ、それを乗り越えたところにしか新しいものはないのではという気も最近はしている。

テーマだけでなく劇のことばも多分そう。そういう卑屈でナイーブな自意識から離れるための一つの手段として、伝統芸能を取り入れていくという方向がある。が、そこには大きな断絶がある。そもそもその断絶のために生まれたコンプレックスをそれ以前から求めることは容易ではない 

https://twitter.com/liveonthe3rd/status/1685802819272806400?s=20

ツイートのURL はまだTwitter なのだなといま引き写して思うが、ともかくこれは演劇に限らず文芸全般についても言えることで、小説はもちろん漫画まで話を広げても未成熟であることへの忸怩と矜持のないまぜになった態度表明にまみれている。たぶん、そもそもこの「未成熟/成熟」であるとか「子供/大人」という思考体系じたいが罠のような気がする。そんなようなことを僕もまた投稿し、続けてこう書いた。成熟というのは、たかだか西洋近代ローカルの体系への馴致のことでしかないので、この二項対立でものを考えるということじたいを疑ってかかる必要がある。そうでないと、けっきょくは「お金は大事」みたいなことを卑屈な顔でつぶやくだけの「大人」を中心にした語り以外なにも出てこなくなる。

なんだか僕はずっと同じ話をしているなと思う。象の旅では近代資本主義的な価値体型からズレるためには、とにかくだらだら話すことが大事で、完パケをめざさない制作というものを志向するといいのではないかというような話を僕はしていて、これはなかなかいいことを言っている。上のメモだってほとんどこれと同じことを言っているようなものだ。

800円もした貝柱の旨みを吸った冬瓜はさすがに美味しくて、冬瓜は嫌いだと思い込みかけていたがおいしく食べることもできるのだと知った。ともかく冬瓜というやつは主役ではなくメディアとして優秀なのだと思う。冬瓜じたいを味わおうとしてはいけないのではないか。やはり嫌いなのだろうか。多めに作ってタッパーに詰めるようなフローができていて、毎日の品数が多いので楽しいが、今日ほとんど食べ切ってしまったのでまたどんどん作るフェーズに入ると見ていいだろう。奥さんとは料理のリズムも、面倒を感じる部分もうまい具合に異なっていて、分担するととてもいい感じになるのだが、あまりにも楽すぎて一方的に負担を押し付けているのではないかという不安が拭いきれないでいる。足の親指を気がついたら人差し指の上に交差させていてあまりよい癖であるとは思えない。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。