2023.08.31

月見バーガーが食べたいという奥さんの気分が伝播して、お昼はケンタッキーの出前をとった。ちょうどよくジャンクで、化学調味料のくさみは控えめ。いま食べたい味だ。ハンバーガーの口で、でもケンタッキーにはチキンしかなくて、ハンバーガーが挽肉のことだったらどうしようという危惧があったが、食べてみれば味の濃いなにものかがパンに挟まっていればもう立派にハンバーガーなのだった。

きょうは休みで、『絡新婦の理』をがっつり読むぞ〜という気持ちだった。奥さんは在宅で仕事で、集中が切れると僕がプルーストよろしくベッドに構えたスペースで読書しているところに邪魔しにきてあれこれとおしゃべりを仕掛けたり物理的な妨害をしたりする。猫を飼っていたらこんな感じなんだろうなと思うことがある。最近は猫が飼いたくて仕方がない。自分の思い通りにならない存在を中心に生活したい。でもそれはある程度、いっしょに暮らしている節度も良識も共有できる人間がすでに担っている位置でもある。読書中に奥さんが闖入してくるのは僕はけっこう好きで、それこそ猫可愛がりしてしまったり、逆にてきとうに放っておいたりするのが嬉しい。奥さんは、そんな大量生産された文字なんかに面白さで負けてたまるかよ、と対抗意識をめらめら燃やしていた。京極夏彦はそれこそSNS やゲームの時間の代わりに入り込んでいて、隙間をみっしり埋めるようにして読んでいる。本が大量生産品だった時代は彼方かも知れないけれど、この本は確かにたくさん刷られただろう。僕は本を読むのが早いわけではなく、暇さえあれば細切れにいつだって読んでいるというだけなのだ。スマホを見ずにKindle に夢中になっているというだけで、実質は何も変わらない。きょうはあまり読めなかった。奥さんに構い過ぎたからではない。途中でうとうとしてしまったり、中断が多いとやはりなんだかんだで速度がつかない。だからほとんど一日中なにか読んでいたようなものなのに、消化不良のような感覚がある。ぼけっとしていたら夕食を作りそびれかけてしまって反省。ニトリで買った電子レンジは三ヶ月で壊れた。皿を回したり光ったりチーンと鳴ったりはできるのに一向に温めてくれない。こういう場合はもうダメらしい。レシートも保証書も失せていて、これは買ってきた僕の不注意だから、しょんぼりする。安物買いの銭失い。次は家具屋じゃないやつを買おう。これを機に溜まってる粗大ゴミをまとめて処分してしまいたい。

80年代の田舎町に、50年代に住民を恐怖に陥れた連続殺人鬼と酷似した怪人が現れる。ラジオDJ が通話だけで人々の脱出をサポートするというゲームを始めた。間接的に声だけで共有される恐怖。面白いのだが操作性が壊滅的で、なかなか複雑な遊び心地。字幕の表記ががたがただけれど、英語が聞き取りやすくていい。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。