朝からあまり食欲がなく、コーヒーだけ飲む。窓の外はげんなりするような灰色だった。それなりに機嫌よく、午前中から昼過ぎにかけて二時間ほど録音のために喋り続けた。二本録りで、片方は福岡に行っている間に配信するためのもの。最近は月曜の夜になってからであるとか、しれっと火曜や水曜に配信したりとか、毎週月曜0時という約束事をへっちゃらで反故にしがちであるが、なぜかたまにこうやって律儀である。たくさん喋ってだいぶ満足したのでいい一日だった。もう出かけなくともいいかなとも思っていたけれど、せっかく着替えたしと奥さんが珍しく外に出る気概を見せていたので僕も部屋着を脱いで外着を着込んで外に出た。僕が何日も家を出ていない奥さんを歩かせようと散歩に誘うのはよくあるが、渋っている僕が外に連れ出されるというのは新鮮で、やはり歩くと気分がよく、こういう珍しいことがあるから毎日は面白いなと思う。ソフトドリンクの飲み放題を始めたお店があって、紅茶が何種も楽しめる。この前ランチで来たときに知って、いつかだらだらしたい時に使おうと考えていたのだった。この店は価格の割に味が安っぽく量もないので不服だったが、だからこそ飲み放題で何時間も粘るという高校生みたいな所業でもなんの背徳感もなく、もとから場所に払うような金なのだから構うことはない、なんなら長居のために電源や漫画も置いておいてくれたらいいのに、などと嘯きながらiPad でBUCK-TICK のライブ映像を眺めながら何杯も紅茶をお代わりした。利尿作用を実感する。何度もトイレに立ちながらお互い思い思いに本や調べ物をして過ごし、けっきょく四時間くらいは滞在したのではないか。いい遊びだった。お互いに敬意をもつような場所も気持ちいいけれど、雑に使っていい場所というのもまた助かるもので、どちらかが唯一の正解というわけではない。夕食は軽めのはずが、お腹ちゃぽちゃぽで余裕がある分むしろ豪華で、無花果と鶏の甘じょっぱく蒸したの、ポテサラ、白和え、にんじんラペ。食後はゲームをしたいとSwitchで『キングダムハーツ』を買って遊び始める。奥さんは懐かしさのあまり呻いていた。僕はプレステ2の時代に誰かから借りたものの操作性が合わな過ぎてはじめの島が襲撃される夜道の暗さでどうすればいいのかよくわからなくなりあっさり二時間ほどで断念したという記憶しかない。やってみるとものすごくあっさりと先に進めてしまって断念した箇所がどこだったかもわからない。しかしカメラの切り替えが極悪で、揺れに揺れる画面に酔ってしまい、気持ち悪い、と言い残して僕は寝た。