2024.01.03

予定がなくなったので二度寝三度寝と重ねてだらだらする。

『ニュルンベルク合流』を読み終えた。大戦後の国際法をめぐる法制史を、著者自身の家族についての私的な個人史と織り交ぜて語るという話法。それがそのまま、ラウターパクトが「人道に対する罪」という概念に託した個人の権利は国家の利益を超越するという信念と共鳴している。見事な一冊だった。しばらくほうける。

奥さんとゲームをして遊ぶ。『The Past Within』という協力型脱出ゲーム。シナリオは謎だがなかなか面白かった。類似の『We Were Here』も一作目が無料だったのでインストールしてみるが、どうもバグが多くて詰まってしまった。口直しに『The Past Within』を役割を入れ替えてもう一周。

夕食はビリヤニおせちの最終回。海老ビリヤニ、赤魚の西京焼きビリヤニ、黒豆カレー。海老が大きくて立派だった。ワタもおいしそうだったから、殻をとっておいて最後に炙って燗にした酒に入れて飲む。ごきげん。

ロラン・バルトの「レッスルする世界」を読みたくて取り寄せた世界思潮新社の『神話作用』を読み、『現代プロレス入門』に軽く目を通し直して、Kindle Unlimited で直近二週分の「週刊プロレス」も斜め読みする。

(…)レスラーというものは、いら立たせたり、嫌悪を与えたりすることはあるが、落胆させること決してない。レスラーは意味記号を順次に凝固することによって公衆が彼に期待していることを、徹底的に完成するからだ。レスリングでは、何物も全面的にしか存在しない。いかなる象徴、いかなる比喩もなく、すべてが余すところなく与えられる。何物も影に残さず、身振りはすべての余分な意味を切り払い、観衆に対して儀式的に、自然と同じようにきっちりとした、純粋で充実した意味を提供する。この誇張は、現実の完全な明白さという古来からの民衆的イメージに他ならない。レスリングによって身振りで示されるものは、だから、事物の理想的な明白さであり、人間であることの幸福感であり、日常の状況の基本的なあいまいさの外へ一時的に高められ、意味表象が障害も逸脱も矛盾もなく遂に原因と一致するような包括的な自然のパノラミックな見通しの中におかれている。

ロラン・バルト『神話作用』篠沢秀夫訳(現代思潮新社) p.17-18

レスラーというものは、いら立たせたり、嫌悪を与えたりすることはあるが、落胆させること決してない! すごい期待を煽る言葉ではないか。パノラマ──遮蔽物のない広々とした見晴らしを実現するために、最大限誇張された種々の身振り。ここまで、プロレスにまつわるディスクールだけを見聞し、いまだ実際の試合の全容を映像で確認することをしないできた。とことんブッキッシュに幻想を深め、実態を前に言説から構築したイマージュとの比較をする、そのようにして挑みたいと思ったからだ。思えば僕はあらゆる欲望をそのようにして構築している。しっかりわくわくしている。楽しみだな。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。