2024.03.23

二日酔いなのか、気圧のせいなのかわからないがものすごく体がだるく、なかなか起き上がれない。八時に目が覚めて、小一時間ぐずぐずしてしまう。お腹がすいて、普段は一個の今川焼を二個食べる。外に出ると雨で、空気が冷たい。あまりに寒い。背中が痛い。急激な温度の低下に強張っていたのだろうか。頭がうまく動かない。のろのろと這い出す。

午後になっても昨日の日記すら書く気になれず、ううう、と唸るばかり。あったかいうどんを食べるが改善されないから二日酔いではないのかもしれない。

さすがに埒が明かないので昼休憩を延長してホットペーパービューティーで見つけたマッサージ屋に行く。外壁も内壁もべろべろに朽ちた雑居ビルの四階、エレベーターは二階からしかないのでもういっそ階段でいいやと登っていくと踊り場に洗濯物が干してあって行く手を阻むようなロケーション。扉を開けると予約名も聞かれないままベッドに案内される。指圧は強力で声も出ない。このまま捩じ切られるかと思ったし、背中なんかは内出血で跡が残るのではないかとさえ思うが、終わったら気分爽快だ。お腹も動き出したし、なにより頭が冴えている。だいたいのことは血行が大事だ。

もう元気だ! 嬉しくなって日記を書き終え、ばりばり作業して、終えたら両親と会っている奥さんと合流してお食事でも、と約束までしたのだが、夕方に向かうにつれだんだん具合が悪くなっていく。あれだけ強く指圧されたら揉み返しも筋肉痛もあるだろうな、と納得していたはずが、いや、これは、神経痛かも、と気がついたらもう最後。指先が異様に冷たい。体の芯の部分が寒い。風邪だ。奥さんに断りの連絡をして帰る。電車がつらい。ぶるぶる震える。葛根湯を服んで布団に入る。38度2分まで上がる。早めに帰ってきてくれた奥さんにアイスやパンを買ってもらったけれど、ポカリだけ飲んでどんどん眠る。疲れが極まったな、と思う。以前も銭湯でぽかぽかしたあとに熱を出した。風邪を引くにも元気が要る。僕は元気が出た。だから倒れてしまった。おしまいです。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。