2024.05.04

床の塗装と打ち合わせのため出かけていく。暑いくらいの快晴で、百枚近いフローリングにオスモカラーをコテバケで塗っていく。オスモは発火性があり、今日のような気温で塗料の染み込んだ布を放置しておくと火が出る可能性がある。じっさい新居を買ったある家族がDIY で壁を塗っていたのだが、始末を怠って翌日には燃えていたというおそろしい話もある。作業中の家は木材の削りカスもあちこちに舞っているから、いちど燃え始めたらどんどん広がるだろう。剥き出しの柱に作業道具を吊したり、簡易の棚が作られたりして、その仮設アトリエ感にわくわくする。やすりをかけられた木の匂い。祖父の工房を思い出す。黙々と塗っていく。半分くらいのところでお昼。おいしい中華。満腹で眠たくなる。だんだん効率が上がって、前半よりも手早く残りを終わらせることができた気がする。食後の代謝のよさで汗が噴き出る。塗る時間よりも乾かすために場所を確保して並べ直すほうが時間もかかるし疲れた。アイスを食べて体を冷やして打ち合わせ。壁材や照明などの詳細を決めていく。頭がぼーっとしてくるのでコーヒーを買いに行ってカフェインが頭に染み渡るようだ。ハイになっててきぱきと判断を下していく。ここで元気を前借りしたのだろう。帰宅する駅でいまだかつて体験したことのない猛烈な眠気。目を瞑ったらもう起き上がれない気がして必死で意識を保つ。最寄駅についてからの記憶がない。ベッドに横たわった途端に眠る。そのあいだにシャワーと夕食の仕込みを済ませた奥さんが声をかけにくるところで目が覚めて、夕食を仕上げ、レスリングどんたくの録画を見ながらごはん。お風呂に入るとどろどろだった体がさっぱりして気持ちがいい。手と頭をよく動かした日は言葉がついてこない。心地のよい疲れだ。よく眠れそう。もう一回寝ちゃったけど。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。