はじめに
どうも。柿内正午と申します。ふだんは東京で会社員をしていて、たまに文筆活動などをしています。共著者の青木さんとはお友達です。
この本は、奈良県東吉野村で自宅を「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」として開いている青木真兵さんとのお喋りの記録です。もとになったお喋りは、隅田川のあたりを散歩しながら、名古屋のON READING のイベントスペースで、それぞれ録音されました。音声は、開局十年目になるネットラジオ「オムライスラヂオ」で配信されています。オムライスラヂオ、通称オムラヂは、青木さんのライフワークでもあります。青木さんは自身の登壇される有料のイベントでもどんどん録音し、無料で配信している番組で振る舞ってくれます。文字で読むとまた印象や風合いが変わってくるので、もちろん読んで面白いものにはなっていますが、もし、内容だけ知れたらいいやということであれば、ぜひオムラヂを聴いてみてください。各配信プラットフォームから、各章のタイトルで検索してみると出てくるはずです。それでじゅうぶんとなれば、浮いたお金で別の本を買ったり、おいしいものを食べたりするのも楽しいと思います。
「二人のデカメロン」というタイトルは、新型コロナウイルスの感染拡大にはじめて見舞われていた時期に、オムラヂと僕が配信しているポッドキャスト「ポイエティークRADIO」とを交互に往復しながら、十日にわたってお喋りを配信した企画の名前をそのまま採用しています。十四世紀中ごろペスト大流行に見舞われたヨーロッパでボッカッチョによって書かれた小説から拝借しているわけです。ボッカッチョの『デカメロン』は話し手も十人いますが、僕らは二人。しかしよく喋る二人です。
この本に文字として収録されるお喋りは、ややこしいことに「二人のデカメロン」として配信されているものとは別の録音をもとにしています。つまり、音声配信版の十日とはまた別の十日を本の形でやってみようとたくらんでいるのです。この本は、うまくいけばシリーズ化されて、年に一冊くらいのペースで細々と出せたらいいなと考えています。とはいえ、どこから読んでも、どこでやめてもまったく問題のないものになるはずです。
この本にはお喋りの書き起こしのほかに、二人がそれぞれ二つのエッセイを書いています。わいわい話しているときはあまり感じないのに、文字を起点とした言語表現を比べてみると、両者はテイストがまったく異なっており、なぜこの二人の会話が成立するんだ? と不思議にもなる。それもまたおかしいです。
とくだん気づきも学びもないような雑談ですが、なんだか楽しそうな雰囲気は伝わるのではないかと自負しています。目的のなくぺちゃくちゃと話せるというのはすごく嬉しいことだなと本を作りながら何度も感じました。本というのは話し相手でもあるはずなので、相槌やツッコミを入れながら、この本を介して一緒にお喋りができたらよいなと思っています。
では、どうぞ~

