2024.06.28

天気極悪。すぐ近くで解体工事も始まり、重苦しい曇天の下で破壊の音が絶え間ない。亀を洗いついでにベランダから覗き込むと建物があっさりと瓦礫に変わっていく様が確認できた。面白くてたびたび覗く。

きのうから『ほんとにあった!呪いのビデオ』の過去作を漁っているのだけれど、「これがY2Kのリアルや」と言いたくなる芋臭いファッションや、いかにも金のなさそうな部屋がたくさん記録されていて、ぐっとくる。渥美清が生きていた頃に撮られた『男はつらいよ』の映画が69年から95年、『ほんとにあった!呪いのビデオ』のシリーズ開始が99年。この二つのシリーズを追いかければそのまま日本語文化圏の半世紀の着飾っていない風俗を垣間見ることができる。呪いのビデオは作業中に流しておくから、だいたいおわかりいただいてあげられない。でもくどいほどリフレインするから問題ない。圧縮すれば尺が半分くらいになりそうな、その塩梅がいまちょうどいいのだろう。密度がありがたくない時もある。

夜、さすがにぐったりしてきて、ぱーっとやるためにバスで街へ。洋食居酒屋でやたら芋ばかり食べながらスパークリングやサングリア。スペイン料理屋に移ってイワシの酢漬けやフムスをお供にシェリーをいただく。ふたりともワインは頭が痛くなって苦手なのだが、シェリーは飲むたび冴えていくようで不思議だった。帰宅して『魔法使いの約束』の配信を見る。二幕から。きのうは奥さんが一幕を見ている間呪われていた。たぶん一幕に好きなキャラたちが出ていたっぽいが、ファウストも可愛い。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。