2021.02.28(2-p.16)

きょうはご飯のお供パーティーだった。ちりめん山椒、サグパニール、卵黄の醤油漬け、牡蠣の佃煮、トマトと大葉の酢漬け、ツナピーマン、ウニとイカの塩辛みたいなやつ、茄子の味噌炒め、いくら、鰤味噌、納豆に切り干し大根混ぜたの、大根の唐揚げ、里芋の唐揚げ、そういうものがずらっとテーブルに並んで壮観だった。久しぶりのパーティーで、人と暮らすと言うのはパーティーをするということだった。それを長らく忘れていた。パーティって、いいねえ、と四人でごはんを六合平らげた。六合ってどのくらいだ、賢治が玄米を四合食うとかいうよね、石高ってもともと一人当たりの年間の米の消費量をいうらしいよ──いま調べたら「一人扶持」というらしい、だったら十万石饅頭は十万人養えるのか、などと話していた。小指にネイルを塗ってもらって光の具合で色の見え方がずいぶん変わるので面白かった。満腹で僕は昼寝をしたあとボードゲームに合流した。なんか間取りのやつとか、サイコロが残るやつとか。夜は家計の振り込みがてら散歩に出て、夕飯は昼の名残り。六合と言うのはこの夜のも合わせての量だったかもしれない。けっきょくそれは多いのかそうでもないのか。一人扶持というのは武士一人の一日の米の消費量を五合としているらしいが、武士はそのくらい食べるだろう。僕らが武士と同じ基準で食べる量を多いとか少ないとか言う必要はない。しかしもしかしてこの武士一人当たり、には武士の養う世帯が含まれたりするのだろうか、などとすこし思うが、ちゃんと調べる気が起きないのでそのままにしている。ともかくおいしい物を食べるというのはいいもので、ずいぶん満足したのだった。

それからだいぶ溜まったしいいだろうということで『俺の家の話』を一話観た。ドラマはがっつりまとめて見たいのだが、結局ちまちましか時間が取れなかったりする。みんな在宅で仕事だと、奥さんはテレビをモニタにするから尚更テレビが空かない。お馴染みの面々がたくさん出てきて、『タイガー&ドラゴン』は高校生の頃お年玉でDVD ボックスまで買うほどだった僕は嬉しくなる。これは僕はTwitterではミュートワードにしていて、というかここ数日は『CCC』に忙しくてあまりTwitterも見ないのだが、ともかくドラマもアニメもTwitterで盛り上がっていると先にその盛り上がりを見てしまうから後から見ても僕が見ているのかTwitterで言われていることをなぞるように見ているのかわからなくなるとは言わないが、先入観によって白けてしまうことばかりというか、みんなが代わりに見てくれてるからもういいや、とそもそも見ないで済ませてしまうことも多いから、他人の感想がたくさん目につくと言うのも考えものだった。結局作品と受け手の関係は一対一でしかありえないはずなのに、うっかり集合知的なものと同化するような錯覚を覚えてしまう。ポッドキャストをやっていて良かったと思うのは、声色にはつよがりや知ったかぶりなど、言葉の足腰の弱さが露呈するところで、文字だと──すくない文字数だと尚更に──猿真似でも簡単に格好つけれてしまう。それって本当に自分に身についた言葉なの? みたいなことには敏感でいたいし、そのうえで素直にかぶれてしまうのもよしとしたい。

柿内正午(かきない・しょうご)会社員・文筆。楽しい読み書き。著書にプルーストを毎日読んで毎日書いた日記を本にした『プルーストを読む生活』、いち会社員としての平凡な思索をまとめた『会社員の哲学』など。Podcast「ポイエティークRADIO」も毎週月曜配信中。