いっときは5号からの連番で三つ同時に存在していた、その末の台風7号は進路を関東にとり、これまでとは比較にならない暴風雨をもたらすと予報されていた。困ったのはきょうの紀伊国屋ホールでの公演のチケットをとっていたことで、しかも開園ぎりぎりまで労働があるから、行くのであれば朝から出社しなければならなかった。寝起きの時点で行く行かないを判断するというのは無理で、だから昨晩のうちに諦めたのだが、勿体ないことをしたという気持ちはぬぐえず悶々とする。なによりモヤモヤするのは制作の対応で、昨日のうちに運休などの情報は出ていて、だから遠方からの観劇は難しいことがわかっているのだが、上演予定です、状況に応じてまた変わるかも、としか告知は出ておらず、行きたくても行けない人たちへの配慮がまったく見られないことだった。他の公演をみると別日への振り替えや払い戻しについてすでに情報が出ており真摯だ。ぎりぎりまで引っ張り、自己都合のキャンセルとして払い戻しはしたくない、というとことん興行側の都合だけで動いている感があり、帰宅の心配をしながら観る側の心情や、泣く泣く断念するこちらの無念がまったく考えられていないんだな、と思うとすっかり気持ちが冷え込み、行く気をなくす。しかし無駄金を払ってしまったという悔しさだけが募る。採算の合わなさを考えると、一銭も払い戻したくない、という事情もよくわかる。しかしだったらせめて、無理してこなくてもいい、でもお金は返せない、ということを、きちんと明示してほしい。判断をすべて客側に押し付けて、来るも来ないも勝手です。こっちは上演するだけなんで、あとのことは自分で考えてください、その結果として来ないのならばお金は返しません、ということをきちんと公言してくれるならまだいいが、ふわっとした文句で、上演はしますよ、とだけいって、すべてこちらに押し付けてくるその誠実であることへの怠慢にがっかりする。このスタッフらの公演には二度と行くか、くらいの憤りがある。しかしこれは低気圧由来のくさくさする気分にも多分に負うところがあって、そもそも台風が近づいているときにこちらが刻一刻と変わる状況を整理して判断を下せる体調であるわけがないのだ。奥さんは僕を置いてぎりぎりまで行くか悩んで、胃が痛くなってけっきょく行かなかった。このような迷いや無念を、制作側から押し付けられたことは、やはり許しがたいことのように思う。
腹いせに退勤後はDDTのビアガーデンプロレスを観ながら飲もうと、明太子のだし巻き卵、吉野家の頭の再現、右の煮汁で豆腐を煮たの、塩麴漬けの野菜、自家製マヨネーズの冷やしトマト、かぶの酢漬けなどを準備して、スクリーンでアーカイブの映像を見ながらビールやワイン、紹興酒を飲んだ。けっこう楽しくて、会場は臭そうで、スクリーン越しで助かった。しかし屋外は静かで、食後には月さえ見えたから、行けたし帰ってこれたじゃん、と賭けに負けたような気分は晴れない。せっかく断念したのなら、外にいる人たちには酷い目に遭ってほしかった。くそがよ、と思いつつ、にこにこ酒を飲み、プロレスを観て、眠くなって寝た。
